市場・プロダクト・組織の三拍子がそろう「コミューン」への出資 :ZVCが支援する理由
9月15日発表させていただきました、コミューンの出資を担当した、Z Venture Capital(ZVC)の都です。現在COO兼パートナーとして、投資部門と管理部門の統括に加え、投資業務を行っております。キャピタリストとしては、AIやエンタープライズソフトウェア領域に注目しています。
ZVCからコミューンへの出資に至るまでの背景やコミューンの魅力を、少しでもお伝えできればという思いで、本Noteを投稿することにしました。
企業とユーザーが融け合うカスタマーサクセスプラットフォーム「commmune」19.3億円の資金調達を実施コミューン株式会社のプレスリリース(2021年9月15日 10時00分)企業とユーザーが融け合うカスタマーサクセスプラット
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目次
- 出会いのきっかけと最初の印象
- 支援を決めた理由
- 最後に
出会いのきっかけと最初の印象
私がコミューンのCEOである高田さんと初めて関わったのは、1年以上前の2020年5月でした。前回のシリーズAの資金調達に動き出したタイミングで、Z Venture Capital側での担当の一人として、初めてお会いしました。
残念ながら、当時は私の能力不足もあり出資に至りませんでしたが、初めてコミューンのプロダクトの説明を聞いたときは、あまりにも斬新でびっくりしました! 聞いてみれば、なんとヤフーようなのポータルを各顧客が持ち、それを起点に顧客とのコミュニケーションができるCRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)ソリューションを開発しているとのことでした。
正直なところ、自分なりにプロダクト事例はニュースなどで細かくチェックしているつもりでしたが、顧客との接点のために企業がYahoo! JAPANのようなポータルを作れるというプロダクトは、あまり前例を見ないものでした。
斬新なプロダクトにもかかわらず、潜在する顧客ニーズ・課題、精緻に分析された顧客層、目指している今後のロードマップなどについて、高田さんは少しもあせらずに理路整然と丁寧に説明してくれました。そこで、彼自身が本当に価値のあるものを作り出している、と確信しました。(顧客だったら、契約してしまったかも知れません(笑))
キャピタリストとしても、CRM領域は注視している分野であり、「日本発のプロダクトで世界と勝負したい」と当時からも思っていました。「今回こそは、チャンスを逃すまい」と爆速で投資検討を進め、出資に至りました。
支援を決めた理由
まずは「今回こそは、絶対に」という気持ちを落ち着かせる必要がありました。そして、冷静に投資検討を進める中、あらめてコミューンの魅力を強く実感し、支援することを決めました。理由は、市場、プロダクト、組織の3つにおいて、成長のために必要な要素がすべてうまい具合に整っているところにありました。以下、1つずつ説明していきます。
理由 1 – 市場
CRMや顧客管理のためのソフトウェア市場は、国内だけでも2024年に2,300億円、グローバルでは2027年には944億米ドル(10兆円程度)に達すると予想されており、規模・成長速度ともにポテンシャルが高い市場です。
この魅力的な市場に、今まさに2つの新たな風が吹いています。
一つ目は、顧客やユーザーの「LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)」を高める経営の重要性が浸透していることです。アメリカ時価総額Top50に位置する SaaS企業の90%は自社で顧客ポータルを作って、顧客のLTVを上げるためのカスタマーサクセス活動(顧客事業の成果の実現を目指し、能動的に顧客に対して働きかける活動)を実践しています。また、テクノロジー企業の約50%が、顧客コミュニティ運用などオンライン上での何らかの活動を通じて、カスタマーサクセス活動を積極的に行っています。日本でも2018年から、こうした動きに注目が集まっており、大手企業が相次いでLTV経営にカスタマーサクセス部署を立ち上げています。
二つ目は、コロナ禍により、B2C・B2B問わず、顧客の発信・情報収集のメインがインターネットにシフトしている点です。ある調査によると、「口コミサイト」は商品やサービスの購入時に「テレビ」と並ぶ情報源として重視されています。また、「SNSの投稿・写真等」も4割弱が重視している、というレポートがあります。ゆえに、顧客による自社プロダクトの良い評価を、オンライン上で広げるための活動は、今後ますます重要になってきます。つまり、既存顧客を顧客ポータルでファンにしておくことは、このプロダクトの良い評判を広げる活動に寄与することになると思います。
コミューンは、プログラミングやコーディングなどのスキルがなくても、ノーコードで実装できるソリューションを開発・提供しており、まさに「カスタマーサクセスの盛り上がり」と「顧客接点のオンライン化」という、2つの新たな潮流にストレートに答えるプロダクトです。市場環境は、しっかりと整っていると思います。
理由 2 – プロダクト
次に、プロダクトです。commmuneは、顧客とのコミュニケーションの数のアップさせ、そしてそのコミュニケーションの質をアップさせる仕組みが、簡単かつ効果的に行えるようになっています。
今までは、企業側が提供する顧客との接点は、Q&Aサイト、問い合わせフォーム、メール、又はSNS上の公式チャンネルなど、目的によって様々に存在しており、顧客からすると「いつ、どこで」企業とコミュニケーションをとればいいのか、わかりにくくなっていました。ユーザー体験も非常に悪かったと思います。
しかし、commmuneを使えば、Q&A、トレーニング、マニュアルなど、企業から顧客に対する情報提供はもちろん、顧客同士がコミュニケーションを取ったり、顧客から企業に対してフィードバックを収集できる機能まで存在していて、顧客に関する情報も解像度が高くリアルタイムで集めることができます。しかも、これらすべてが一つのインターフェース(顧客ポータル)上で、ワンストップで提供できる仕組みを提供しています。加えて、そのポータルを作るのはノーコードで、とてもシンプルに制作、更新ができる優れものになっています。
顧客からすると、異なる製品・機能ごとに、異なる場所で行っていた企業とのやり取りが一本化されるので、そもそもどこに行けば良いかを迷う必要がなくなります。「iPhoneのアプリのダウンロードならApp Store」みたいな“迷わない”世界が実現できます。
また、企業からすると、顧客とのオンライン上の接点がそもそも不在だったり、作ろうとすると膨大なコストをかけなくてはならなかったものが、commmuneの導入で、簡単に実装できるようになります。ノーコードなので、更新や変更のたびに開発部門とのやり取りも必要ありません。
まさに、顧客とのエンゲージメントを高め、プロダクトやビジネスの改善にもつなげられ、顧客の満足度がさらに上がるというLTV経営の根幹の整備という観点から、「一石三鳥」に違いないと思います。海外で流行っているCRMの再現などではなく、世界でも類を見ない独自性あふれるサービスになっています。
理由 3 – チーム
最後に、何よりコミューン社の強みだと思うのが、そのチームです。
経営陣の高田さん、橋本さん、山本さんの3人の役割が明確で、それぞれが相互補完関係にある長所を持ち合っていて、とてもバランスが取れた安定した経営がなされています。
まずはCEOの高田さんは、前職の戦略コンサルタントとしての知見をふんだんに活かして、顧客ニーズや対象顧客層の特定、市場でのcommmuneの位置づけや、成長戦略をとても深く考察し、会社全体の方向性を導く役割を担当してくれています。
また、橋本さんはグーグル本社での経験を活かし、優れたプロダクトの在り方、そして顧客のニーズに合致するプロダクトの開発や価値の伝え方を、徹底的に追及するチーフ・プロダクト・オフィサーの役割を担っています。
そして、肝心な開発は、大手ゲーム会社でフルスタックエンジニアとして活躍していた山本さんが担当しています。ビジネス向けのプロダクトとはいえ、最終的にプロダクトと接点を持つのは、そのビジネスの顧客個人であるため、継続的なエンゲージメントを図るための仕組みや顧客体験は、とても重要と思います。大ヒット作のオンラインゲームの開発から得られるノウハウがここで活きてくると思います。
そして、その3人がとても丁寧に心がけているのが組織作りです。常にメンバーの一人ひとりがオーナーシップを感じる組織作りに日々励んでいます。
たとえば、株主に開示するような経営に関する情報開示が、ディテールの細かい部分までメンバー全員に共有されているなど、透明性を重視した経営をしている点もそうですし、メンバー全員が心理的安全性を感じられるように、オープンな情報交換や、中長期的な方針の策定に関しても、自由に発言ができる環境整備をしています。
こういったバランスが取れた経営陣からは、洗練された会社経営の在り方を感じられましたし、メンバー全員がオーナーシップをもって前進する組織からは、会社とプロダクトへの強い情熱を感じました。
最後に
CRMという領域は、たくさんの会社が様々なアプローチで事業展開をしています。よく言えば比較的に馴染みにある領域であり、ストレートに言えば斬新さに少し欠けている領域とも言えます。しかし、コミューンが今挑んでいる新たなチャレンジは、CRMの中でも、企業のコミュニケーションポータルやLTV経営支援ソリューションという、前例を見ないとても新しい分野になると思います。
コミューンには、市場環境、プロダクト、そしてチームと、今後、非連続的な成長を成し遂げるためのすべてが揃っています。コミューンが新たに切り開く未来を、ZVCとしても全力で支援してまいります。
また、担当キャピタリストとしても、M&Aや事業開発、事業投資・ベンチャー投資の経験に加え、楽天市場での事業経験など、インターネット領域で投資や実務の両方の景観とノウハウを最大限活用して、コミューンを全面的にバックアップしていきます。引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。