Setlogへの投資

by Kinuko Kitabatake

Z Venture Capital(以下、ZVC)は、ビジュアルコミュニケーションアプリ「Setlog」を運営するNew Chat Inc.(本社:米国ニューヨーク、CEO:Devin Doty)のシードラウンドに出資しました。


今回の出資発表にあわせて、New ChatのCEOであるDevin Doty氏との対談記事も公開します。ぜひあわせてご覧ください。


Setlogの特徴は、1時間ごとの通知に合わせて、わずか2秒の動画を撮影するというシンプルな仕組みです。韓国でのリリース後、広告に頼ることなくユーザー間の共有を通じて急速に広がり、いま日本のZ世代の間でブームとなっています。


これまでのソーシャルメディアは、フォロワー数やアルゴリズムによる拡散が価値の指標となっていました。他者の評価を前提とした投稿・自己表現が重視され、その反動として、いま若い世代を中心に、日常のコミュニケーションはオープンの場から、信頼関係のある限られた相手とのクローズドな空間へと移りつつあります。


Setlogは、この変化を最も素直な形で捉えたプロダクトです。ユーザーは友人とグループをつくり、1時間ごとに届く通知に合わせて2秒ほどの動画を投稿すると、メンバーの動画が時間ごとに並び、互いの1日を追うことができます。そこで生まれているのは、言葉ではなく映像で時間を分かち合う、新しいコミュニケーションです。

Setlog: https://newchat.kr


AIによって生成されたコンテンツがSNSに溢れる中、若い世代がより重視しているのは、人がその場で撮影した飾らない瞬間、つまりリアリティです。その価値は、ありのままの姿を見たり共有したりできる環境にあると考えます。


本来は、つながる相手が増えれば増えるほど、人は自然と見られ方を意識するようになりますが、Setlogは、共有相手を自ら選ぶ少人数のグループ、作り込む余地のない2秒という尺、そしてメンバー全員の視点で編まれたログが思い出として蓄積される仕組みを組み合わせることで、ありのままの日常を共有することが、特別な努力を必要としない、自然な習慣になるよう設計されています。


Setlogは韓国でのリリース後、ユーザーが自発的にSetlogを利用したVlogをSNSに投稿したことで話題になり、現在は日本が最大の市場となっています。既存のソーシャルメディアに疲れを覚えていた若い世代にとって、親しい人とのつながりを確かめ続けられる場所が身近にあることへの安心感や、自分で編集しなくても、その日撮った短い動画を自動で時系列にまとめてくれる利便性などが受け入れられています。


ユーザーはSetlogを毎日の暮らしの一部として使い続けていて、その利用頻度や継続性は、私たちがこれまで見てきたソーシャルアプリの中でも際立った水準にあります。


Setlogを率いるDevinは、Snapchatでプロダクト開発に長く携わってきたデザインエンジニアです。今回、投資に至るまでのデューデリジェンスで対話を重ねる中で際立っていたのは、彼の誠実さでした。目の前の課題に真摯に向き合い、やるべきことを徹底してやり切る姿勢に、その誠実さが表れていると感じました。こうした彼の姿勢は、プロダクトにも一貫して見てとれます。Setlogはユーザーデータの取得を最小限にとどめています。他のソーシャルメディアで見られるような、連絡先を取り込んでつながりを広げる仕組みも採用していません。


成長の手段やデータ活用の余地を自ら手放すようにも見えるこの選択は、投資家にとって評価の難しい点でもありました。 ただ、彼らが創業当初から掲げている、ユーザーが安心していられる場所をつくるという思想には、強く共感しました。その想いは、シンプルで使いやすい機能、そして洗練されたデザインの細部にまで反映されています。わずか4人のチームがAIを活用しながら、多くのユーザーを抱えるプロダクトを運営し、ユーザーの声に素早く応え続けていることにも感銘を受けました。


次に目指すのは、米国を含むグローバル市場です。米国のコンシューマーソーシャルはプレイヤーが多く、流行の移り変わりも速い、難しい市場です。それでも若い世代の間には、既存のアプリへの飽きや違和感とともに、日常に自然に馴染む新しい居場所を探す動きがあると見ています。ただし、日本での成功をそのまま持ち込むのではなく、同じ思想を土台に、米国のユーザーのために体験を作り直す必要があります。米国はDevinが長年プロダクトをつくってきた本拠地であり、その挑戦に期待しています。


ZVCは、日本、韓国、米国の3拠点に投資チームを持つCVCです。Setlogがリリースされた韓国、最大の市場となった日本、そして次の挑戦の地である米国。そのすべてに拠点を持つ私たちだからこそ提供できる価値があると考えています。


日本のコミュニケーションインフラであるLINEをはじめ、様々なサービスを持つLINEヤフーグループの一員として、ファウンダーと連携しながら、Setlogが生み出している体験を支え、ともに成長していきたいと考えています。


長く愛されるコンシューマーサービスをつくることも、成長を続けながら、ユーザーがありのままでいられる場所を守り続けることも、簡単ではありません。それでも、その難しさに誰よりも誠実に向き合うチームとともに歩めることを、心から楽しみにしています。