ヤフーからZVCに転籍します。採用強化します

ヤフーからZVCに転籍します。採用強化します

皆さんこんにちは。Z Venture Capitalの堀です。

2021年10月。YJキャピタルとLINE Venturesが合併しZ Venture Capital(以下、ZVC)として新たな航海に出てから半年が過ぎました。10月1日よりZVCメンバーは、ヤフーからの出向を解除しZVCに転籍します。引き続き、グループ会社の一員ではありますが、大企業ヤフーの社員という保護された立場がなくなり、イチCVC(Corporate Venture Capital)の社員として独り立ちしていくことになりました。
(旧LINE Venturesのメンバーは年明けに転籍予定です)

ヤフー、LINEといったインターネット業界を代表する企業を親会社に持つ二つのCVCが統合というイベントもあり暫くバタバタしていたので、今日は改めてこれまでの9年を振り返ってみたいと思います。

YJキャピタル創業: 2012年9月

2012年3月、創業期からヤフーを牽引してきた井上社長が宮坂さんに経営をバトンタッチしました。FacebookがNasdaqにIPOした5月、ヤフーではCVC立ち上げの議論がスタートしました。

破壊的イノベーションを発見しに行き、スタートアップと共に成長する。そしてキャピタルゲインも得る。そういった目論見でYJキャピタル(以下、YJC)が、10億円の1号ファンドが設立されました。

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初代社長には当時のヤフーの大矢CFOが就任。取締役にエンジェル投資家としても有名な小澤さんが加わり、矢継ぎ早に投資を決めていきます。3ヶ月で投資資金は底を尽き、20億円の投資総額の増額を行うという荒々しい船出でした。

かくいう私は2012年4月にヤフーに入社し、M&Aチームに配属されました。YJCに参画するのは2013年7月で、YJC設立から10ヶ月が過ぎていました。

2号ファンド設立: 2015年1月

30億円に増額したファンドもあっという間に投資余力が無くなりました。1号ファンドの投資先は続々とIPOし、設立から2年しか経っていませんでしたがVCとして驚異のパフォーマンスを叩き出していました。YJCの親会社ヤフーは、2号ファンドの運用総額を200億円に増やします。2倍、ではなく約7倍です。私は当時取締役会に同席出来なかったので伝え聞いた話ですが、これほど順調にいっているのであれば1,000億円にまで増やしても良いのではないか?という意見も出ていたとのことです。当時1,000億円のファンドが出来たらどんなことになっていたことやら(笑)

2号ファンドは200億円。1号ファンドでは国内投資だけを行ってきましたが、200億円の軍資金を持って海外投資にも足を踏み入れることになりました。このタイミングで小澤さんはヤフーショッピングの責任者も兼務していたこともあり、多忙を極めていたので社長を当時のヤフーのM&A責任者の平山さんに引き継ぎます。

海外にはヤフージャパンの名は知られていない。海外の起業家に覚えてもらえるようなインパクトを先に残そう。そういった狙いから全メンバーが侍のコスプレをし、ホームページをリニューアルしました。

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侍衣装のオンデマンド撮影の手配がつかず、鎌倉武士のコスプレ写真になってしまったことは良き思い出です
200億円規模のYJキャピタル2号ファンド始動——起業経験アリの役員らがパートナーに | TechCrunch JapanヤフーグループのコーポレートベンチャーキャピタルであるYJキャピタルは1月27日、ベンチャー投資ファンド「YJ2号投資事業jp.techcrunch.com

社長交代: 2016年10月

ファンドサイズが200億円になり、投資対象エリアも世界に広がったことでメンバーはあちこち飛び回っていました。そんな最中、平山さんにカフェに呼び出され「他社に転職することになったから後は任せたい」と突然の告白を受けます。大矢さん、小澤さん、平山さんと続いたバトンを私が受け継ぐことになりました。

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社長就任を受けてオフィスにいたみんなとパチリ

代表を引き受けた後、いくつかの課題が浮かび上がってきました。社長じゃなかった頃には見えていなかった景色だったかもしれません。1つ目はメンバーの離脱。これはもう、私自身の問題であり、深く反省しています。社長という役職をきちんと理解していなかったこと、そして結果を出さなくてはいけないという焦りからメンバーの育成やサポートを疎かにしていました。

もう一つは海外投資のパフォーマンス。2015年から海外投資をイスラエル、韓国、米国、東南アジアといったエリアで行ってきました。国内投資のパフォーマンスと比較すると海外投資の結果は活動期間2年弱と短い期間ではありましたが、誰がどう見ても低調でした。社長になってから初めて行った意思決定は【海外新規投資の凍結】でした。

投資資金も余っており急いで投資を進めなくてはならない状況でしたが、足元を固めることを優先して組織づくりに着手します。

組織づくりは決して平坦な道のりではなかったです。CVCという歴史の浅い組織体が、独立系を含む数々のVCが乱立するマーケットで外部から採用が容易に出来なかったからです。ヤフーでは中途採用に関して厳しい基準があります(これは組織として素晴らしいことです)。ポンポンと採用がまず出来ない。人材要件を満たす高スペック人材に来てもらおうにも、競合VCほどの柔軟な報酬制度というわけではないのでなかなか良い人材に入ってもらえません。採用は、ヤフーにいる人材を引っ張ってくるしか方法がありませんでした。社員数が数千人もいるから十分じゃないか、という声もあるかもしれませんが、ヤフーの社員でVC業務を経験した者は皆無だったので、これまた百戦錬磨のキャピタリストが活躍しているマーケットでは大きな周回遅れを強いられました。

こうした状況下で、世間で活躍しているキャピタリスト(ソーシング力を持っていて、ビジネス経験も豊富で、金融・会計・法務ノウハウを保有している)をロールモデルにした人材開発を諦めます。世の投資銀行、証券会社、コンサルティングファームがやっているようにセクター別のスペシャリストを擁立することに方針転換しました。これは社内でも反対の声がありましたが、生き残る道として選択しました。

EV Growth Fund設立:2018年4月

海外投資の凍結を決めたものの、海外投資が成功する要件とは何か・そもそも投資が成功する要件とは何か。ということをずっと考えていました。私の上司でありメンターでもある小澤さんには「投資してもらいたい、と思われるブランド・信用が無ければどこの国で投資をやっても良い起業家に投資出来ない」と言われていました。国内では小澤さんが約4年間かけてYJキャピタルの立ち上げに尽力してくれたため、YJキャピタルに素晴らしいブランドが築かれたと思っています。しかし、海外で同じことをやろうと思うと、そもそも人生を海外生活にかけられる人材を採用し、その人がブランド立ち上げるまでに4〜5年は待たなくてはなりません。グローバルでスタートアップ投資はどんどん成長していたので、思ったように海外進出出来ない現状に焦りの気持ちがどんどん募っていきました。

そんな中、グローバル市場でブランド力を保有するパートナーと共同GPという形であれば海外投資にチャレンジ出来る、と考えるようになりパートナー探しを始めました。どのVCもヤフーと共同GPを立ち上げるメリットを感じてもらえなかったのですが、east venturesのManaging DirectorのWillsonと話す機会が2017年9月に訪れます。日本ではメルカリを始めとする数々の著名なスタートアップに投資しているVCですが、東南アジアではTokopediaやTravelokaのシードステージから投資をしている、東南アジア№1のシードVCです。

私はYJCで東南アジアのエリアを中心に投資を行っていましたが、誰もが投資をしたいと思っている優良企業のシリーズAに参加出来ずにやきもきしていました。一方で、east venturesは殆どの有望なスタートアップのシードステージに投資していました。当時、シードVCでeast venturesが頭一つ抜け出ていたからです。そして、彼らのポートフォリオ企業に対して東南アジアを代表する有名なVCがシリーズAでバンバンと投資を決めていました。「私もそのインナーサークルに入りたい」と常々思っていましたが、出張ベースでは簡単に入れてもらえません。そこで「シリーズA以降の投資機会を域内の他のVCに提供する前に、east venturesとYJCで先に出資しませんか」と私からWillsonに提案したところ、「たまたま同じ提案をSinarmasから受けたところでこれは何かの偶然かもしれない。SinarmasもYJCも共にeast ventures Seed FundのLPなので、この際3社でGrowthステージに特化したVCを作って、東南アジア№1のVCを一緒に目指していかないか」とトントン拍子で高層が実現に向けて突き進んでいくことになりました。

本提案はヤフーの経営陣から「このスキームなら海外投資を任せられる」とお墨付きをいただくことになり、半年後には150億円のEV Growth1号ファンドをeast ventures、SinarmasとYJCの3社の共同GPファンドとしてスタートすることが出来ました。

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EV Growth Fundの面々と
左から衛藤バタラ氏、Willson氏、Roderick氏、堀、大久保義春氏
East Ventures、YJ Capital、SMDV、1.5億米ドル規模のファンド「EV Growth」を設立——インドネシア企業のシリーズB資金需要に対応 | BRIDGE(ブリッジ)テクノロジー&スタートアップ情報East Ventures、YJ Capital、SMDV、1.5億米ドル規模のファンド「EV Growth」を設立——インドネシア企業のシリーズB資金需要に対応East Ventures、SMDV(Sinar Mas Digital Ventures)、YJ Capital が共同thebridge.jp

3号ファンド設立:2018年8月

社長就任、組織づくり、EV Growth立ち上げと色々なイベントが次々と起こりますが、当然国内スタートアップの資金調達環境は賑やかなので、投資活動は休むことなく進みます。また、日を重ねるにつれスタートアップの資金調達金額はどんどん大きくなっていきます。ついこの間まで30億円のファンドを運営していた自分たちが、突如200億円という巨大なファンドを任された時には一体いつになったら組入が終わるんだろう、と想像も容易にできなかったものです。YJCはシードからレイターステージの全てのステージに投資するオールステージVCです。レイターステージでは2016年にビズリーチへ16億円の投資を実施しました。また、east venturesと共同で運営するアクセラレータープログラム「Code Republic」でも続々とシード投資も行っています。気付くと2号ファンドの組入も順調に進み、新たなファンドを設立する必要が出てきました。1号・2号ファンドで素晴らしい起業家の皆様とご一緒させていただいた実績を評価していただき、ヤフー取締役会で叱咤激励のメッセージとともに200億円の3号ファンド設立の承認が降りました。

3号ファンド設立の年は、ヤフーの経営体制が変わった年でした。全社で投資活動を積極化していく号令が新社長の川邊さんから発せられていました。川邊さんからは「キャピタルゲインだけではなく、CVCとしてシナジー創出で結果を出して欲しい」というメッセージを頂きました。新しい経営陣の期待を胸に、YJCはシナジー創出を2012年8月の創業以来、より強く意識した運営に移行していくようになります。

具体的な戦略は、前述したセクター別のスペシャリストをコマース、メディア、フィンテックとZホールディングスが所有する事業アセットに合わせた3本の柱とし、これら3領域を重点投資領域に設定します。各セクターのスペシャリストが事業開発のテーマを各カンパニー長に提案する流れを作りました。この活動は2018年から開始していますが、まだまだ改善の余地があり、進化させていかないといけない、と思っています。

投資ファンド「YJ3号投資事業組合」の組成決定について - ニュース - ヤフー株式会社about.yahoo.co.jp

Z Venture Capital爆誕:2021年4月

ある日、Zホールディングスの経営幹部からLINEとの経営統合について聞かされます。そして、LINE VenturesとYJCを一つにするという話が舞い降りてきました。LINE Venturesのメンバーは8割以上がソウル、サンフランシスコ、北京といった海外拠点にいます。

コロナ禍で合併相手のメンバーと直接顔を合わせて話し合うことすらも出来ません。令和の時代のM&Aは全てオンラインで進めなくてはなりません。元々PMIを経験したことがないのに、ぶっつけ本番でオンライン・グローバルPMIにチャレンジです。

言葉やカルチャーの違いから様々なすれ違いも生まれます。「Zoom飲み会やらなくなったよねー」というような声が聞こえますが、Zoom飲み会しか交流する手段がないので今でも月1でパートナー間ではやってます(笑)

数々のハードル(!?)を乗り越え、無事に2021年4月1日にZ Venture CapitalとしてZホールディングスのCVCとしてYJCとLINE Venturesは生まれ変わりました。ファンドサイズも300億円とさらにビッグになりました。

YJキャピタルとLINE Venturesが合併、Z Venture Capitalとして本日より事業開始 - Zホールディングス株式会社プレスリリース - YJキャピタルとLINE Venturesが合併、Z Venture Capitalとして本日より事業www.z-holdings.co.jp
YJCとLINE V合併、新生「Z Venture Capital」誕生ーー堀代表に聞く"300億円新ファンド"と投資戦略 | BRIDGE(ブリッジ)テクノロジー&スタートアップ情報YJCとLINE V合併、新生「Z Venture Capital」誕生ーー堀代表に聞く“300億円新ファンド”と投資戦略Zホールディングス(以下、ZHD)の連結子会社で事業投資を手がけるYJキャピタルは4月1日、LINE Venturesと合thebridge.jp

合併からの6ヶ月間の振り返り: 2021年10月1日

ファンドのPMIの経験がある方はそんなにいらっしゃらないと思いますが、私にとっても初めてのことで思った以上に大変でした。2020年2月にジョインしてくれた都さん(現ZVC取締役COO、パートナー)の加入はとても力強かったです。都さんは韓国語、日本語、英語を堪能に話すことが出来ます。旧LINE Venturesの幹部と腹を割って話す際には都さんに沢山助けてもらっています。

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写真は2020年2月に都さんが入社した時の記念撮影
早くこの頃に戻りたいですね

投資委員会運営やDue Diligence(投資検討業務)といった超重要な業務に加え、人事評価制度などファンド運営のみならず会社運営に関わる様々な業務を統一化していかなくてはなりません。ビジョン、ミッション、バリューの策定なども本来であればオフサイト合宿を開催して喧々諤々の議論を行いたかったですが、全てオンラインで対応しなくてはいけません。

ZホールディングスとLINEの統合に関して公正取引委員会による審査が行われていたこともあり、LINE Venturesの皆さんとCVCの統合について議論することが直前まで出来ませんでした。なので、4月1日までに合併に関する全てのタスクを消化できませんでした。とりあえず、投資活動ができるようになっていないとマズイ、ということでファンドの設立だけは間に合わせ、4月1日からガンガン投資ができるようにしました。ホームページもとりあえず形式的にLPだけ準備しました(正式版は年内にリリース予定です)。

Z Venture CapitalZ Venture CapitalはZホールディングスのベンチャーキャピタルです。Zホールディングスとともに未来を作りますzvc.vc

結果、この半年間、約30社近くに約50億円弱の投資を行うことが出来ました。もちろん、日本だけではなく、米国・東南アジアにも投資をしています。Z Venture Capitalに関わる全メンバーの努力に本当に感動しています。

アジア№1のCVCを目指すべく、投資活動に並行して会社運営もどんどんパワーアップしていっています。

5月より、Z Venture Capitalは取締役会設置会社に移行しました。また、監査役にはZホールディングスの法務統括部長である妹尾執行役員に就任してもらいました。

また、8月からは今までフロントメンバーとして活躍してきた岡本紫苑さんにCFO兼General Counselに就任いただき、フロントの活動に加えてミドルバックの総責任者として国内とグローバルのファンド運営に深く携わっていただくことになりました。

岡本紫苑

ミドルバック総責任者に就任した岡本紫苑CFO・General Counsel

そして、10月からはメンバーがZ Venture Capital株式会社に転籍します
Z Venture Capitalの定める勤務形態・報酬体系のもとで、投資活動に従事してもらいます。独立子会社として、独り立ちしていきます。

思い返すと2013年6月に小澤さんに誘われて、ヤフー主務・YJC兼務という形でベンチャー投資業務に携わってきました。道中、ヤフーのM&Aの業務が忙しくなりすぎてスタートアップ投資がままならなくなり、主務をYJCに切り替える、といった経緯もありました。しかし、この8年間はずっと「出向」という扱いでした。今回の転籍は、親会社Zホールディングスの私達に対する期待がとても大きいものだと受け止めています。

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