【後編】日常生活に溶け込むNFT。ブロックチェーンで変わる日本のビジネス環境

【後編】日常生活に溶け込むNFT。ブロックチェーンで変わる日本のビジネス環境

前編では、Zホールディングスの一員であるLINE Xenesis株式会社(以下、LINE Xenesis)が2019年から取り組んできた暗号資産サービスの可能性をうかがいました。(前編はこちら

日本で暗号資産やNFTはまだまだなじみが薄いため、単なる投資対象のひとつととらえられがちです。

NFTが特別なものではなくインターネットのように私達の日常に溶け込む存在となるには、どのようなステップが必要なのでしょうか。LINE Xenesisの戦略をうかがいました。



【LINE Xenesis株式会社 CEO 林仁奎(イム・インギュ/ALEX)】
2008年4月 CJ Internet株式会社(現ネットマーブル株式会社)に入社、ゲームプラットフォーム事業戦略を担当。
2010年7月 NC Japan株式会社に入社、ゲーム事業における経営戦略や新規事業を担当。
2014年4月 NHN Japan株式会社に入社、日本・グローバルマンガアプリ事業の執行役員に就任。
2018年2月 株式会社カカオジャパンに入社、動画配信事業の事業部長に就任。
2019年3月 LVC株式会社(現LINE Xenesis株式会社)に入社、暗号資産事業の事業戦略業務に従事。
2020年7月 代表取締役社長CEOに就任。

【Z Venture Capital株式会社 アソシエイト 李路成(リ・ロセイ)】

2013年4月 早稲田大学入学

2014年10月 留学生向け教育サービスを立ち上げ

2017年10月 リクルートに入社。入社後はコンテンツSEO、UIUX改善、有料広告などデジタルマーケティング全般の業務に携わる。

2020年1月 YJキャピタル(現ZVC)に参画し、E-commerce、Fintech、Web3(ブロックチェーン関連)領域を担当し、投資機会の発掘や、最新トレンドの調査を行う。


LINEの強みを活かすLINE Xenesisの戦略



LINE Xenesisの優位性は、やはりアクティブユーザー数9,200万人を超えるLINEとの親和性にあると思います。その点について林さんはどのようにお考えですか?


そうですね。NFTをインターネットのように日常のものにするには、使いやすさが一番だと思います。

トークンにはそれをどこで保管するか??という問題があります。LINEはNFTの売買だけでなくウォレットも提供しているので、オンラインショッピングと変わらないシームレスな体験ができるんですね。

それはLINEスタンプやLINEマンガ、LINE MUSICなどのIPホルダーの方から見ても大きな可能性になるのではないでしょうか。NFTを特別なものではなく、身近なものとして使えますから。


そのためにLINE Xenesisはどのようなステップを考えていますか?


最初のステップは、NFTとの親和性が高いIPコンテンツのNFT化です。いまの日本は「NFTはよくわからない」という段階にあります。海外でNFTが盛り上がっているとか、高い金額がついているアートのニュースを見ても、なぜそんな価値があるのかわからないと感じている人も多いはずです。

だからこそ、普段よく利用する馴染みのあるものにNFTを導入することが必要だと考えています。そこで登場するのが、LINEのプロフィールです。

普段よく利用しているLINEにNFTを活用していくことで、”NFTはこんなふうに使えるんだ”という実感を得られると思います。すると、オンラインショッピングの感覚でNFTが使えるようになります。ただ、それだけでNFTが広く普及するとは思っていません。

NFT後発の日本市場のポテンシャル


LINE NFTの課題はどのようなところにありますか?


やはり、マスアダプションですね。世の中に広く普及することです。いまNFTに興味を持っている人は、どちらかといえば情報に対してセンシティブな人たちですが、どんなサービスもイノベーター理論のように普及するとは限りません。

LINE Xenesisがやっているのは、NFTの「保管」「移転」「売買」「活用」です。



日本は暗号資産が後発とのことですが、LINE Xenesisは日本市場のポテンシャルはどこにあると考えていますか?


海外と比べて、日本では規制環境がしっかり整備されていることですね。これによって統制がとれるため、暗号資産サービスに対して少しずつですが、クリーンなイメージの醸成ができています。

また、分別管理義務が入っているので暗号資産業者が破綻しても、ユーザーにはお金が返ってくる仕組みが整えられているなど、金融庁が管理監督できる状況のため、ユーザーとしては安心して取引ができる市場環境が整っています。さらに、規制環境があるなかでも、信用取引などができる点は、健全な暗号資産事業の発展の上で大事な点だと感じています。

アメリカでは早くから暗号資産関係のビジネスが登場しましたが、バイデン政権になってから規制条項ができています。後から規制ができると、それに対応するのは大変です。
スピードの面で日本は劣るかもしれませんが、何もないよりずっといいと私は思いますね。規制に関する考え方が、日本と海外の大きな違いだと考えています。
逆に言えば、規制の多い日本で成功すればグローバルにやっていけるということですから。

新しい技術の登場で市場はどう変わるか



モノがインターネットでブロックチェーン上におかれると、どのように市場環境は変化しますか?


日本のコンテンツ市場は、デジタル化したことで拡大したと思います。電子書籍市場はその好例です。

技術の変化は、ビジネスモデルの変化をもたらします。サブスクが登場してからすでに15年ほど経ちますが、そろそろ次のビジネスモデルが出てくる時期ではないでしょうか。

電子はコピーされやすいという弱点がありますが、所有を限定できるNFTがあれば、オフラインのものをデジタルに持っていくことも容易になります。


林さんは韓国等の海外の状況にも詳しいと思います。韓国のNFTの状況について教えてください。


私の知る限りでは、日本でもよく知られている韓国のコンテンツ会社で、ファンのためにトークンを発行しそのトークンでコンテンツを買えるようにする、という話があったそうです。ただ、実現には多くのハードルがあって難しかったようですが。

韓国と日本の違いは、新しい技術に対する考え方だと思います。新しい技術を利用してビジネスを拡大できると考えるのか、ビジネスが侵害されると考えるのか。

韓国は自社のビジネスに技術を導入したらどうなるの?と貪欲に考える習慣があるように感じています。


最後に、あらためてLINEのブロックチェーン事業の今後の方向性をお聞かせください。


「NFTを使えば、こんないいことがある」と一人ひとりが実感できる社会を創っていきたいです。例えばAmazonのようにいろいろなものがそろっていて自分の趣味・趣向にあわせていろいろなものが購入できるような場所を作っていきたいですね。