ビジョナル上場に寄せて

ビジョナル上場に寄せて

昨日4月22日、Z Venture Capital支援先のビジョナルが東証マザーズに上場しました。終値ベースで2491億円でした。国内のユニコーン上場(1,000億円を超える規模での上場)では18年6月上場のメルカリ以来の規模だったそうです。素晴らしいですね。関係者の皆様、おめでとうございます。

ユニコーン「ビズリーチ」上場 今年国内初

写真撮影会に駆けつけることが出来なかったのが本当に心残りです(涙)
さて、興奮冷めやらない内に、ビジョナルから学んだことをメモとして残しておき、今後の起業家の皆さんやベンチャーキャピタリスト(特にZ Venture Capitalの若手!)の役に立てばと思い出をしたためます。
思い出ランキングを発表したいと思います。(後日、追記するかもしれません)

目次

  1. 1位:経営幹部とのお見合いパーティー
  2. 2位:時間をかけた経営体制変更
  3. 3位:毎年開催されるクレイジーな全社員集会
  4. 4位:株主総会予行演習、きめ細かな株主対応
  5. 5位:投資家との約束。約束を守る漢
  6. 6位:歴史に残る投資委員会
  7. 7位:親引け参加

1位:経営幹部とのお見合いパーティー

出資直後の話なんですが、社長の南さんから2016年のシリーズBラウンドで参画した投資家を招待し、会社で懇親会を開催したいと連絡をいただきました。
二部構成になっていて、第一部では会社の概要説明や今後の戦略についてプレゼンテーションが行われました。資金調達したばっかりなのに、またプレゼンするのって傍から見ていて少し不思議な感覚でしたが、新しく一緒になった投資家が一同に介して南さんのプレゼンに耳を傾ける。あの時間は、株主同士の連帯感を醸成するにはとても良いと思いました。
45分ぐらいで第一部が終わると、隣の部屋に案内されます。第二部の始まりです。テーブルが8つぐらい置かれていまして、そこに4-6名、社員の方が座っています。何が始まるのかと思いきや、経営幹部と投資家の1セット15分の懇談タイムが始まりました。1セット終わると、社員の方が隣のテーブルに移動します。いわゆるお見合いパーティーです(笑)
社長の南さんは隅っこで眺めているだけです。経営幹部の皆さんはとても貪欲に質問してきます。「何故、我社に投資してくれたんですか?」と真剣な眼差しで聞いてくるので、私も本気で熱意を持って説明します。あっという間に15分が過ぎます。
投資家の手元には、社員のプロフィールが書かれたメモが渡されます。僕は大学生時代にお見合いパーティーの司会のアルバイトをしていたこともあったので、ビジョナルの皆さんの仕切りを見ていてプロ顔負けだと思いました(笑)
この第二部は僕はメチャクチャ感動しましたし、投資して良かったな、と心から思いました。ぶっちゃけて書くと、投資前にこれが行われていたら、出資額は倍以上だったかもしれません。(本当に)
心から南さんが自社の社員に対して誇りを持っていて、「どうですか?うちの社員優秀じゃないですか?」って部屋の隅っこから僕に語りかけているようでした。また、本当に一人ひとりの方が素敵で、素晴らしい方の集まりでとんでもない人材集団だなあ、と感じることができました。
その後、ヤフーの事業部を紹介する時など、この懇親会での交流があったので名前と顔が一致していて交渉などが進めやすかったです。
これ、100人以上いるスタートアップの皆さんにはオススメです。また、投資に至るまで、経営幹部と交流する機会ってあまりないので、常日頃から経営者以外のスタートアップ幹部の方を知る、ということも重要だな、と教わりました。

2位:時間をかけた経営体制変更


お見合いパーティーが強烈すぎたんですが、出資後の経営会議に参加すると突然南さんから株主に説明がありました。ビズリーチなどの主要事業の事業責任者を創業メンバーから次世代の経営幹部に引き継ぐと。
一瞬「えっ!」ってなりましたが、引き継ぐ経営幹部の皆さんはお見合いパーティーでお話した面々。今まで事業を牽引してきた方は全員新規事業の立ち上げに回ると南さんが言うんです。「第二の創業です」という説明がなされます。
創業メンバーは0→1(ゼロイチ)に優れたメンバーなので、これからビズリーチを超える事業を沢山仕込みに行きたい、と。今まで事業を牽引してきたメンバーは経営会議等を通じて、新たに主力事業の責任者についたメンバーをしっかりとバックアップしていく。1〜2年かけて主力事業のKSFを引き継ぎ、1→100のフェーズを担ってもらう。
分厚い優秀な人材がいる会社じゃないとこういった意思決定は取れないですよね。勿論、シリーズBラウンドがクローズする前から南さんを始めとする創業メンバーが考えていた作戦(!?)だとは思うのですが、それにしても思い切ったことをやるなー、とただただ感心していました。
結果として、昨年にはホールディングス体制に移行し、第二の創業メンバーである多田さんが現在の売上の80%を占めるビズリーチの代表に就任。2016年から始まった引き継ぎも、業績は一回も下がることなく右肩上がりで成長。サービスがしっかりしていることもありますが、サービスを支える優秀な人材と、それを育成していくトップの懐の深さ。

ビジョナルの南壮一郎社長「採用と人材活用の一体サービス、10年で完成」

こちらの記事にあるように、目先の利益ではなく3年・5年の視座で未来を見ながら事業づくりしているからこそできる決断だったと思います。これも出資後に知ったことでしたが、出資前に知っていたら出資額はさらに倍増していたかもしれませんね(笑)

3位:毎年開催されるクレイジーな全社員集会

第一部では、戦略発表や社員表彰を行ったり、ステージの上で南さんが拳を振りかざして「We're Bizreach!」と連呼します。
隣の会場に移動して、第二部が始まります。参加者に法被が配られます。突然会場の照明が消灯されます。すると、スモークが炊いているところにピンライトが当たります。そして甲冑を着た南さんが登場します。櫓が用意されており、櫓にみんなが登ってお祭りが始まります。

痩せてる私。。。
仕事を思いっきりやって、遊びも思いっきりやる。仕事も大胆に。遊びも大胆に。社員の皆さんも全力で、仕事が忙しいのにも関わらず最高に楽しいコンテンツを用意してきます。破格な社員総会、毎年見学しに行くのがとても楽しかったです。ここでも社員のみなさんと株主として交流できるのはとても良い経験でした。
ビジョナルのワンチーム力は、この破壊力抜群の社員総会で倍増されていると思います。
撮りためた動画があるのですが、多分怒られるので公開は控えさせていただきます(笑)
今はコロナの馬鹿野郎のせいでこういった取り組みができなくなっているかもしれません。また、遊びにも一生懸命な全社集会に参加出来る日を楽しみにしています。

4位:株主総会予行演習、きめ細かな株主対応

上場する何年も前から、上場後を見据えて株主説明会を開催していました。
株主の数が多かったこともあり、経営会議に全員が参加することが不可能でした。でも、少数株主であろうが、しっかりと大切にする会社の発想から上場後の株主総会の予行練習も兼ねて年次説明会を開催することになりました。
この取り組みはとても良いので、私もZ Venture Capitalの支援先のココンにも同様の取り組みをオススメし、ココンでも開催されるようになりました。
また、株主とのコミュニケーションにおいて、非常に細かい話ですが、南さんはいつも細かい対話を心がけていました。株数の多さに関わらず、真摯に向き合って丁寧に説明し、合意形成されていました。メールだけで片付ける、というやり方をやっていなかったと思います。
株主が多くなるとコミュニケーションコストが大きくなって、経営のスピードが低下する、という文句を言う起業家の方もいらっしゃいますが、ビジョナルは経営のスピードを落とさずにコミュニケーションを大事にしていたと思います。
投資家をとても大切にされるので、何かお願いされた時にはこちらもすぐに応えてあげようと思います。全然連絡がなくて、突然要請だけくると、株主なのでもちろん対応はしますが、普段から大切に付き合いをされている起業家だと心から応援してあげよう、という気持ちになりやすいですね。
腹黒いかもしれませんが(笑)、大事なことだと思います。

5位:投資家との約束。約束を守る漢

2015年の秋に、シリーズBラウンドの機会をいただきました。その時から、「必ず1,000億円以上で上場する」と宣言していました。
投資家としては、起業家から目標となるバリュエーションを自ら宣言してもらえるととても安心します。約束を破ると信頼が崩れるので、不確定要素が高いと約束したくないですよね。
南さんは採用力が高いことで有名です。創業メンバーの竹内真さんを何度も口説いて、入社してもらいました。


口説かれた人材が、「南を漢にしてやろうと決めていた」って考えるのって凄いですよね。詳細は知りませんが、南さんが竹内さんに約束した未来があると思います。
そして、約束をしっかりと達成していく。この精神力。凄いですね。南さんの採用力って、こういうハートの奥底から来ている気がします。超精神論ですが(笑)
2,490億円で上場したことで、約束を倍返ししてもらいました(笑)
ありがとうございます。

6位:歴史に残る投資委員会

私のサラリーマンベンチャーキャピタリスト人生において、最も記憶に残る投資委員会がビジョナルでした。
シリーズBラウンドで約16億円出資したのですが、元々はもっと少ない金額を投資する予定でした。
金額はどうであれ、しっかりと投資検討(DD)を行い、万全の準備をして投資委員会に臨みました。
プレゼン後、投資委員会メンバーから「もっと勝負しにいきなよ」という一言をもらいました。
今まで、自分の実力不足もあって、投資委員会にかける前に見送り判断している会社が沢山ありました。恐る恐る投資委員会メンバーにプレゼンしていることも多々ありました。
しかし、初めて「もっと勝負しろ」という声をかけられて、投資の世界の楽しさを知る機会になりました。
当時YJキャピタル(Z Venture Capitalの前身)では、一社当たりの出資額は5億円が最大だったと記憶しています。それを3倍強で塗り替える事件でした。とてもドキドキしましたし、こういった機会に携わることが出来てとても光栄でした。
攻める時は攻める、を学びました。本当にありがとうございます。

7位:親引け参加

先日Facebookにも投稿しましたが、ビジョナルの上場に際し、Z Venture Capitalとして親引け参加いたしました。


ベンチャーキャピタルは未上場企業に出資をする投資ファンドです。一般的には上場したら持ち株を全部売却していきます。親引けという、上場直前のタイミングで、ビジョナルの株式を追加取得する意思決定を致しました。
今回親引け参加した理由は二つあります。一つは、Zホールディングスとビジョナルにて、スタンバイという人材サービス業を共同で運営しているという点。もう一つは、ここまでnoteで書いてきた内容からご推察いただけるように、我々がビジョナルの成長がまだまだ続くと考えたからです。
ベンチャーキャピタリストとして個人の成長の機会を与えてくれたことに深く感謝しております。そして、ビジョナルの第二章をご一緒できることを誰よりも楽しく思っています。
上場おめでとうございます。そしてこれからもよろしくお願いします。