ユーザーと誠実に向き合う。教育業界DX「Monoxer」の真髄

Z Venture Capitalは、2021年12月20日に記憶定着のための学習プラットフォーム「Monoxer」を提供するモノグサ株式会社(以下、モノグサ)への出資を発表しました。モノグサが展開するサービスや会社として大切にしていること、カルチャーなど、同社取締役CFOの細川さんにお話を伺いました。

モノグサ株式会社 取締役 CFO 細川 慧介
一橋大学社会学部卒。2010年株式会社リクルートに入社し、リクルートグループの経理を担当。2012年からは、株式会社リクルートホールディングスのIPOプロジェクトに従事。2014年からは、株式会社リクルートホールディングスの投資マネジメント室にてM&A、グループ再編等の社内FA及びRecruit Strategic Partners取締役として、リクルートグループのCVCファンドの企画・運営に従事。その後同期である竹内の誘いで、Monoxerに入社。

Z Venture Capital株式会社 取締役COO 都虎吉
サンフランシスコ州立大学を卒業後、2010年に楽天株式会社に入社し、約5年間M&A部門にて企業買収や、Pinterestへの投資を含む、複数の国境を越えたM&A取引とベンチャーキャピタル関連投資を経験。その後、楽天ベンチャーズのパートナーとして国内外の投資活動、及び楽天ベンチャーズの日本拠点の立ち上げを担当。2020年2月よりYJキャピタルにパートナーとして参画。

「記憶」にイノベーションを起こすMonoxerとは

都(doh)

EdTechは2015年頃からのビジネスですが、時代が変わったと思います。「コロナ禍で子どもたちが学校に行けない」という状況が続いて、教育現場のデジタル化が一気に進んでいます。

先生が生徒の顔を直接見られないからこそ、アダプティブラーニングのようなAIによる学習効率化が活きてくるので、モノグサさんのような「教育コンテンツをカスタマイズして学習状況を見える化する」というプロダクトはますます求められていくと思います。まずはプロダクトを紹介していただき、その後に様々な質問をさせていただきます。

細川

Monoxer(モノグサ)は人の「記憶定着」をテクノロジーやAIを活用してサポートするサービスです。現在は、塾や学校などの教育機関で使っていただいているケースが非常に多いです。特徴としては、他社サービスのように画一的なコンテンツやカリキュラムがあるというより、先生や生徒が本当にやりたいことや実現したいことに合わせて、柔軟に活用できるという点になります。

また、これまで紙でやってきたことを簡単にデジタル化できるので、従来の指導方針やカリキュラムを大きく変えずに、学習効率を上げることや、学習状況・定着度合いの可視化を実現できるサービスとなっています。

解いて憶える記憶アプリ「Monoxer(モノグサ)」。生徒に憶えさせたいことを先生が登録すると自動で問題集を生成し、生徒の学習状況や記憶の定着度合いをグラフ化してくれる。

プロダクトの起源。なぜ「記憶」なのか

都(doh)

教育コンテンツほどカスタマイズが必要なものってないですし、みんなが同じ勉強をしても効果が出ないというのは時代と共に判明してきていて、それは言うまでもない既成事実ですよね。EdTechという領域でビジネスをはじめようと思ったきっかけを教えてください。 

細川

創業者の竹内と私はリクルートの同期なのですが、竹内は2010年の入社当時から「30歳で起業する」と言っていました。テーマは「教育格差をなくすこと」。それを通じて「経済格差をなくして世界平和を実現する」という宣言通りにモノグサを起業しています。

最初のアイデアは、英単語帳のシェアアプリでした。リクルート時代に「スタディサプリ」のフィリピンやインドネシア展開を担当していた竹内が「現地で使える英語を学びたいのにそういう教材は売っていない」と。そこで、駐在員の方が日常で使っている英単語をシェアし合うことができれば、もっといろんな人が実用的な英語を学べるようになるのではないかと考えたのがはじまりです。

代表取締役CEO 竹内孝太朗
名古屋大学経済学部卒。2010年に株式会社リクルートに入社。中古車領域での広告営業に従事し、2011年に中古車領域初及び最年少で営業部門の全社表彰を受賞。2013年からは「スタディサプリ」にて高校向け営業組織の立ち上げ、学習到達度測定テストの開発、オンラインコーチングサービスの開発を行う。高校の同級生である畔柳とMonoxerを共同創業。

その後、竹内は後に共同創業者となる、畔柳にアイデアの実現方法を相談したのですが、その中で「英単語帳アプリや教材はたくさんあるけど、いずれもデファクトスタンダードになっていないのはなぜか」という疑問に至りました。そこで、抽象度を上げて考えてみたところ「そもそも、人の記憶のプロセスをよりよくしていくところに着目したサービスって日本はもちろん海外にもないよね」ということに気がついたんです。

代表取締役CTO 畔柳圭佑
東京大学大学院情報理工学系研究科卒。コンピュータ科学を専攻、分岐予測・メモリスケジューリングを研究。2013年にグーグル株式会社に入社し、Text Frameworkの高速化およびLaptop対応、ソフトウエアキーボードの履歴・Email情報を用いた入力の高精度化、およびそれを実現する高速省メモリ動的トライの開発、ジェスチャー入力の開発を行う。高校の同級生である竹内とMonoxerを共同創業。

人の記憶をサポートするサービスであれば、英語学習にとどまらず、人のあらゆる成長を支援できるのではないかと思い、「記憶のプラットフォームを作ろう」と起業に至ったという経緯ですね。

都(doh)

「何のために、何をやって利益を得るのか」という企業の”フォーカス”は大事だと思っていて、モノグサさんはそれがしっかりとしていますよね。

細川

人の成長や自己実現を支援することに対して強い想いを持っていると思います。その上でビジネスや機能について議論するときに大事にしているのは、インパクトの大きさに加えて、「エンドユーザーの成長や自己実現につながるか」ということ。ビジネスとしては良いものだとしても、エンドユーザーの方にメリットがないのであれば、やめるという判断をします。

プロダクトの成功要因は生徒の効果実感

都(doh)

今凄まじい速さで成長をしていて、Monoxerを導入している塾や学校が増えていると思うのですが、PMFを感じたエピソードはありますか?

細川

個人的に一番大きかったのは、Monoxerリリース当初の出来事です。当初のプロダクトは英単語を学ぶ機能のみで、おそらくまだ楽しく続けられるものでもなかったと思うんですけど、とある留学予備校に通っていた1人の高校生が1日何時間もMonoxerを使って勉強してくれて、有名大学に進学が決まるほど成績が上がったということがありました。

現在は英語・国語・算数・理科・社会などのあらゆる科目が学習できる。音声にも対応しており、リスニング対策にも◎。

「記憶」という領域は、まだ強く共感してもらえたり、ニーズがそこまで顕在化しているわけではないので、試行錯誤をしているフェーズではあるのですが、特に初期の頃は生徒の学力向上に力を入れていて、かつICTも積極的に導入しているような塾から使っていただいていました。そこで結果を出せたことで、これからIT化をしていくような塾や学校にも導入してもらえるようになりました。

問題集のオンライン配信は先生の印刷や採点のコストを削減する。先生が生徒の支援により注力できるようになるというメリットは学校での導入を後押しした。

都(doh)

成果につながるプロダクトを提供できていたというところがモノグサさんの成長の原点ということですね。塾や学校に導入してもらうための営業力はもちろんですが、エンドユーザーに愛されるプロダクト力があるところも大きな成功要因の1つですよね。

細川

「エンドユーザーが使ってちゃんと成果を得ることができなければ事業は伸びない」というのは過去の経験からもわかっていたことだったので、エンドユーザーの成功体験についてはかなりこだわってきたと思います。それによって、最初は一学年や一教室での導入だったところからどんどん広がっていったり、紹介で使っていただいたりすることにつながっていったのかなと思います。

プロダクトはみんなで作ってよりよくしていく

都(doh)

モノグサさんがここまで成長してくるまでの間に大きな壁はあったりしましたか?

細川

初期の頃の話ですが、大手塾でMonoxerを検討いただくまでは進んでも、なかなか導入に至らないということがありました。

そこで、何が足りていないのかを社内で深掘りして、単語だけではなくリスニングの学習にも使えるようにしたりなど、プロダクト開発に励みました。結果としてプロダクトが良い形にアップデートされ、続々と導入教室が増えました。

都(doh)

プロダクトを改善して危機を乗り越えたってことですね。また同じような壁に直面したときには「プロダクトに戻る」というのが強みになるでしょうし、それがモノグサさんのDNAに入っているのかなという印象を受けました。

細川

モノグサでは「プロダクトをみんなで作ってよりよくしていく」ということをとても重要視していて、セールスなどのいわゆるビジネス部門のメンバーからもプロダクトに対してフィードバックをしてもらうようにしているんです。四半期に一度開催している、開発の優先順位を決めたり、方向性を決めたりする場は全社員が参加可能になっていて、そこで「現場にはこういうニーズがあるからこうした方がいいんじゃないか」という意見を述べられる。それをもとに、最終的には全社でどういう風にやっていくかという優先度をつけています。

「すべての職種のメンバーがプロダクトをよりよくするところに携われる環境作りは、これから何百人、何千人になってもできるだけやりたいですね」

今年ビジネスがグロースした一番大きな要因は、すでに取引のある塾や学校のみなさんがMonoxerを使い続けてくださっていて、さらにMonoxerで学習してくれる生徒さんを増やしてくださっているからだと思っています。Monoxerを導入した後の”成功”を一緒に伴走していくために、プロダクトのフィードバックをしていくことは非常に重要だと考えていますね。

“ものぐさ”で行こう

都(doh)

「プロダクトをみんなで作ってよりよくしていく」というのはまさにモノグサさんの文化だと思うのですが、それ以外にも企業文化はありますか?

細川

モノグサには「人類への奉仕」「事業へのオーナーシップ」「プロフェッショナリズムの体現」「ものぐさで行こう」という4つのバリューがありまして、4つ目の「ものぐさで行こう」というのは、”モノグサらしさ”が出ているかなと思います。

モノグサは記憶という未開の地でイノベーションを起こしていこうとしているので、3年や5年で結果が出るものではないと思っています。だからこそ「末永くやっていこう」という一種の余裕みたいなものを常に心の中に持ちながら仕事を頑張ろうというものを掲げていて。私とかだとファイナンスの時期はあまり「ものぐさで行こう」感がなくなってきちゃうのですが(笑)、気持ちとしてはいつも持っている感じですね。

モノグサが求める人材とは

都(doh)

素晴らしいですね。大きな絵を描いて、それを達成するために長期的な目線でやっていこうというのはすごくいいバリューだなと思いました。素晴らしいと言えば、モノグサさんでは創業してから退職者がいないそうですが、どのような人がカルチャーフィットするのか気になりました。

細川

採用をするときは、お互いに働くイメージが湧くような仕掛けをしています。たとえば、いろんなメンバーに会ってもらうために最終選考ではオフィスに来ていただいて、選考に関わっていないメンバーも含めてボードゲームを一緒にします。

モノグサでは営業時間中にボードゲームで遊ぶ文化がある。また、飲み会の代わりに週に一度の「おやつ会」で社員同士の交流を深めている。

バリューの話にもつながるのですが、モノグサで働くメンバーは全員「誠実な人」ですね。できることやできないこと、あるいは失敗したことやチャレンジしたいことなどを誠実に共有し合って、共有された側はそれをちゃんと受け止めて、サポートできることがあればサポートをして、一緒に解決していくというところが共通している部分です。

都(doh)

どの企業を見ていても「成功する企業」というのは、従業員にロイヤルティがきちっとあるんですよね。マネージャーからメンバーに期待値を伝えて、メンバーがその期待値に見合った行動を取る。つまり、マネージャーとメンバーの間でエンゲージメントが取れているということです。モノグサさんはそれが機能しているんじゃないかなと思いました。今どういう人を探しているんですか?

細川

セールス、エンジニア、カスタマーサクセス、コーポレートなど様々な職種で採用活動を進めておりますので、「記憶」というテーマに興味がある方はぜひご連絡ください。私の立場的にはHR等のコーポレート部門の方の採用をより頑張らねばと思っています。今いるメンバーが頑張ってくれているおかげでロイヤルティやエンゲージメントが高められていると思うのですが、もっとしっかりとサポートしていけるような基盤を作れると今よりもさらにメンバーがポテンシャルを発揮できるんじゃないかなと思っています。

都(doh)

今後もプロダクトを強化していくと思うのですが、畔柳さんという天才的なエンジニアがいらっしゃるので、エンジニアの方々にとっても魅力的な環境なのかなと思っています。

細川

開発も本当に重要なところで、最近は専門学校や大学、事業会社などからインバウンドでお問い合わせをいただいて使っていただくというケースが増えてきていて、課題解決できる領域が10倍くらい一気に広がっているなという感覚があります。加えて、優秀なエンジニアの方に続々入社いただいているので、今まで以上に成長できる環境が用意できていると思います。

都(doh)

最後に、どのようなマインドの方に応募をしてもらいたいですか?

細川

まずはやはり、自分の強みや弱みを開示しながら一緒に伸ばしていきたいという誠実な方ですね。それから、「記憶」という誰も正解を持っていないテーマを扱っているので、そういうところに対して好奇心を持っていて、チャレンジしたい方がカルチャーフィットするんじゃないかなと思います。

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