
バーバリアンシップで新潮流を 年収1億円エージェントを生む TERASSに迫る
by Shogo Takahashi
Z Venture Capital(以下、ZVC)は、独立系不動産エージェントの支援プラットフォームを展開する株式会社TERASS(以下、TERASS)へ出資を実施しました。
今回、TERASSの代表取締役社長の江口 亮介さんと、本ラウンドを担当したプリンシパルの亀岡 千泰が対談。
対談を通じて、江口さんの創業に至る原体験、プラットフォーム型ビジネスへの転換理由、LINEヤフーグループとの協業構想、そして採用では、いま求めている人材と、”バーバリアンシップ”と呼ばれる独特のカルチャーについて語りました。
【TERASS】
「いい不動産取引は、いいエージェントから。」をミッションに掲げ、「不動産仲介業が今日から・個人で始められる」プラットフォームを構築。基幹システム「Terass Cloud」を中心に、集客(Terass Offer)、顧客コミュニケーション(Terass Portal)、物件提案(Terass Picks)など独自のテクノロジーでエージェントを支援。エージェントはフルリモートで仲介業務を遂行でき、平均労働時間を70%以上削減しながら、取引件数と報酬を大幅に伸ばしている。
▶︎公式サイト:https://terass.com/
対談者プロフィール

株式会社TERASS 代表取締役社長 江口 亮介さん
慶應義塾大学経済学部卒業。2012年リクルート入社。SUUMOの広告営業・中古売買領域のWeb企画を5年経験。2017年マッキンゼーアンドカンパニー入社。M&Aを中心とした経営コンサルティングを経験。2019年4月に次世代不動産エージェントファームTERASS創業。不動産業界に対する革新的なアプローチを評され、「日本の今年の顔」Forbes100 2022選出された。2023年より不動産テック協会理事に就任

Z Venture Capital Principal 亀岡 千泰
早稲田大学法学部、同大学院法務研究科修了後、西村あさひ法律事務所を経て、YCP(コンサル・投資事業)に参画。西村あさひ法律事務所では企業法務の弁護士としてM&A・コーポレート業務に従事。YCPでは幅広いフェーズの企業に対して新規事業創出や戦略作成・経営改善等のコンサルティング業務に従事したほか、自社の投資部門において投資検討・実行・バリューアップ業務に携わり、投資先の取締役を務める。2023 年1月よりZVCに参画
創業の原体験――「住宅購入で感じたギャップがスタートライン」
亀岡:まずは創業ストーリーから聞かせてください。
江口:私が以前、リクルートのSUUMOの営業・企画として不動産業界に関わっていたこともあり、26歳でマンションを購入しました。この体験そのものは、とても良かったです。住む場所が変わると人生観も変わりますし、資産形成というメリットがありました。
その過程のなかで、住宅そのものが人生に与えるインパクトの大きさに気が付きました。一方で、取引をする不動産会社の無駄な仕事の多さに驚きました。
例えば契約書に関しても、担当の方から「判子を一か所押してもらうのを忘れたので、今からお伺いしてもいいですか?」と連絡があり、時計を見たら「え、いま23時だけど、今から来るの?」というような。
亀岡:それはお互い辛いですね。
江口:そうしたことが多々重なり、住宅を買うという素晴らしい体験を提供する一方で、それを仲介する担当者が効率的ではない働き方をしている現状にギャップを感じたんです。それが私が感じた最初の原体験でした。
そこから、実際に自分が何をしようかと考えたときに、やはり自分の原体験も踏まえて、かつアメリカで先行して流行っているモデルなども参考に、日本でも、この非効率を解消するビジネスモデルを展開すべきだと思って創業しました。
亀岡:不動産の購入の際の非効率な部分は、共感する人が多いのではないかなと思います。私自身が住宅を購入したときも、「この書類、スクラッチで作っていそうだけど、テンプレートないのかな?」と感じることがあったり、仲介会社から深夜に契約書が送られてきて、大変な様子が伝わってきたり…あとは「電子契約は出来ないので、収入印紙を買ってきてください」とかもありました。
江口:そうなんですよ。そうした課題を改善したいと思ったことが、起業に繋がっていますね。
亀岡:いろんな選択肢があったと思うのですが、独立エージェントのプラットフォームに行き着いた背景は何だったんですか?
江口:最初、「不動産会社向けのVertical SaaS」を考えていたんです。
ただ、そこで気付いたのは 「不動産会社がちょっと楽になるだけでは、人の人生は変わらない」 ということでした。
不動産業界は断片化されていて、全体的に見てもIT化が遅れがちです。加えて、固定費を増やすことを極端に嫌うんですよ。たとえばサイン契約に関するSaaSの月2万円すら渋る。でも社員旅行には行く、みたいな(笑)。ドーンと売上が立つ瞬間にだけお金を使う心理ですね。
そんな業界に月額課金のSaaSを押し込むより、僕ら自身がテック武装した不動産集団になった方が早いんじゃないか、と思いました。
不動産仲介にあたらしい風を|【公式】TERASS
亀岡:マーケットへの入り方として「仲介」にフォーカスしたのはなぜでしょう?
江口:不動産業は、
・ものを建てて売るディベロッパー
・売買・管理などの仲介・サービス
の大きく2つに分かれます。
仲介はサービス業なので、極論「腕さえあればできる」ということです。サロン業界がフリーランス化しているのとイメージ近いかなと思います。そのため、サービス業は個人化が進みやすい。
だからこそ「腕利きエージェントが独立した個人として活躍できるプラットフォーム」を作り、そこにテクノロジーを組み合わせれば、業界全体の進歩が加速すると考えました。
亀岡:ここは投資家の視点から見ても非常に魅力的なモデルだと思います。Vertical SaaS単体だとTAM(市場規模)が限定的になりがちですが、TERASSのビジネスモデルは、不動産仲介のGMV(流通総額) に連動して成長できます。
市場の広がりが段違いですし、ITツールだけでは解けない課題も、自分たちで実業にタッチしながら解決できる。IPO後も継続的に事業を成長させることができるモデルだと感じます。
江口:ありがとうございます。
プラットフォーム――独立エージェント × テクノロジー
亀岡:次に、TERASSのサービスを支えるプラットフォームの裏側について教えてください。
江口:そうですね。現在の核は、エージェントの業務支援プラットフォームのなかでも、「Terass Cloud」という基幹システムがあり、これによって印刷業務をしなくても、また出社をしなくても、「きょうから不動産仲介の業務を始められる」のが特徴です。
そこに目的別で各プロダクトを連結させています。
・Terass Offer:カスタマーとエージェントのマッチングプラットフォーム
・Terass Portal:不動産売却の受託時に、売主さまにその物件への問い合わせ・反響状況などをリアルタイムで可視化し「囲い込み」を排除
・Terass Picks:AI等を活用し、顧客に適した物件を迅速に提案
各プロダクトを連携させながら、エージェントの業務を案件管理はもちろん集客からご提案・決済まで網羅的にサポートしているのがポイントですね。

(Terass Offerの紹介サイトより)
亀岡:導入によってどの程度、業務の効率化に繋がっていますか?
江口:労働時間を例に挙げると、TERASSに転職したエージェントのうち、前職で「1日8時間超勤務」だったエージェントが63%に上るのですが、それが転職後は8%に減っています。ほとんどの方が労働時間を削減できています。
そのうえで、「前職より顧客に価値提供できている」と答えた人が86%になっています。労働時間を減らしつつ、エージェント側も自身の存在価値を感じていることを踏まえると、私たちとしても良い提供ができていると実感しています。
亀岡:私たちも出資を検討するにあたり、エージェントの方にインタビューを行ったのですが、「移動や業務負担が少なくなり、顧客提案にフルコミットできる」とおっしゃっていました。付帯業務が削減され、成約件数も自然に伸び、収入が増える。働き方の質が変わっていますよね。
江口:本当に良い流れが作れていると思いますね。年収についても、専業のエージェントは半数以上が年収1,000万円以上となり、年収5,000万円、あるいは1億円を超えるエージェントも生まれています。
亀岡:そもそも日本では、エージェントを主軸に置いた会社は珍しいですよね。なぜ今それが可能になったのでしょう?
江口:大きく 2 つあります。
・情報の非対称性の縮小
以前は、大手しか把握できない情報が多く存在していたが、それが次第に崩れ、情報がオープンになり、個人エージェントでも戦える土俵が整ったこと
・規制の緩和
2020年の国交省からの通知を経て、2021年7月1日に「専任宅建士の常駐義務」が正式に緩和。これによりオフィスに縛られず業務が可能となり、当社モデルが現実味を帯びた
ということが挙げられると思います。
亀岡:業界からの反響はいかがですか?
江口:「よく作ったね」と驚かれることが多いです。750人超のエージェントを、100人ほどのメンバーで運営していることもあり、「どうなってるの?」と聞かれます(笑)。
背景には、資金調達をもとに、先行投資をいとわず自前でシステムを作り込んだことがあると思います。
亀岡:先ほど「100人ほどでどう回しているの?」という話が出ましたが、現在のチームの特徴を教えてください。
江口:基本的に“プロフェッショナルしか採らない” 方針なので、プロフェッショナル集団として、皆に熱意を持って仕事をしてもらおう、というコンセプトでやっています。
なので、スタートアップのなかでは年齢は高いほうかもしれません。私が全体で真ん中くらいですかね。役員陣では私が一番年下です。そのうえで、特徴としては:
・働く場所 / 時間は完全に自由=それそれが最大パフォーマンスを出せる働き方
・役職=専門領域を担う少数精鋭
・社内キーワードは “バーバリアンシップ(戦闘民族であれ)”
要は「圧倒的主体性」を持って速く試し、速く失敗し、速く学ぶ文化ですね。
採用面接では「バルみ(バーバリアン度)」があるかどうかが合言葉になっています。

(TERASSのメンバー写真:年2回の”Offsite”は全社員がリアルに集い、思いっきり遊ぶ一大イベント!)
亀岡:TERASSの方々は非常に優秀なので、バーバリアンシップを強みとして更に飛躍されていくと思います。よく特定の会社のOB・OGを「なんとかマフィア」と呼称することがあるように、「TERASSマフィア」や「バーバリアンシップ」という言葉や考え方が広がっていきそうですね。
江口:こうした考えについて、実はいまちょうどビジネス書をある出版社さんから書いているところです。皆さん楽しみにしてください。
ZVCとTERASSが描く―― 「GMV連動モデル」と、LINEヤフーグループとの協業構想
江口:私からも亀岡さんに質問があります。ZVCとしてTERASSへの出資を決断したポイントはどこにありましたか?
亀岡:大きく2つあります。
一つ目は、ITだけでは解決できる課題がニッチ化している中で、このビジネスモデルが非常に優れていると感じたことです。
自社でDXを進め、GMVに対してレベニューシェアを取るというモデルが素晴らしいと思いました。
二つ目は、家探しや不動産探しが現代の流れに非常にマッチしていて、これからさらにその傾向が強まっていくと感じたことです。
不動産マーケットが今後中古マンションの取引でさらに拡大しそうだと思ったことで、より一層、信頼できる仲介と業務DXが必要だと強く感じました。
江口:なるほど。
亀岡:実体験としても「不動産を買う」という行為は大きな決断になるので、やはりプロフェッショナルに最後の背中を押してもらわないと購入の決断はしづらいと感じました。
信頼できる伴走者としてのプロフェッショナルは不動産購入において必要だと思います。
また、不動産取引では書類が非常に多く、申込書や契約書など、すべて紙でやりとりする状況に違和感を覚えました。本当にDXの余地が大きいなと。これらの要素を総合的に考えると、TERASSはまさに各課題に対応していて、「ITツールではなくGMV連動型モデル」という観点でも、完全に時代にマッチしていると強く感じました。
あとは、江口さんの前職でもある元リクルートや、不動産業界の方々からお話しを聞いていても、江口さんへの評価が高く、「ZVCとしても絶対に投資をしたい」と確信に繋がりましたね。
江口:そう言ってもらえるのは嬉しいですね。
亀岡:いま話しながら思い出したのですが、私が不動産を探していた時に、YouTubeでTERASSの「住まいアカデミー」を見たんですよ。内容はもちろん、以前から定期的に更新をされていて、「これは継続力がある」と感じました。
(江口亮介 / TERASS 住まいアカデミー)
江口:ありがとうございます。これはね、自分でも頑張っていると思います(笑)
亀岡:本当にすごいですよ。時々お疲れだろうな、と感じる時もあるのに、それにもかかわらず継続している姿勢に。
江口:最近は、動画で情報収集や知識を得たいという方が非常に多いと思って取り組んでいます。専門的な内容を記事で読むのは難しいですからね。これから住まいを買おうとしている方に、有意義な情報を届けたい。その思いで、忙しい中でもやりがいを感じています。
亀岡:今度はZVC側からも聞きたいのですが、ZVCをパートナーに選んだ理由はどこにありましたか?
江口:大きく二つあります。
1つは、CVCとしての事業共創力です。上場前のスタートアップにとって”資本+シナジー”を本気で提供してくれる株主は貴重だと思っています。
もう1つは、国内最大級のToCアセットです。LINEヤフーは、EC・金融・メディアを幅広く包括していて、不動産との相性も良いと思っています。
私たちの課題は、自分たちの持つデータの少なさなんですよね。TERASSは月間500件規模とまだ取引データが少なく、LINEヤフーの巨大トラフィックはとても魅力的だと感じます。
実際にZVCからの出資が決まってから、LINEヤフーグループとは、連携の話が進んでいます。資本関係があるからこそ、通常のクライアントでは踏み込めない領域まで議論でき、”広告を超え、トランザクションに直結するメディア”を一緒に作りたいと考えていますね。
亀岡:LINEヤフーとは、本当に様々な可能性があると思うので、一緒に伴走していけたらと思います。
採用とビジョン――2027年に「3つのNo.1」を狙う仲間を
亀岡:最後に採用も意識しつつ、今後の事業展開や規模などについて教えてもらえますか。
江口:2027年までに ①独立系不動産仲介No.1、②エージェント数No.1、③エージェントが提供できる不動産関連サービス数No.1――この“三冠”を必ず取りに行きます。
2027年には、創業9年目の会社として、日本一になりたいと思っています。そのために既存と新規の観点で、例えば、住宅ローンがあります。住宅購入が面倒な理由は住宅ローンにもあると考えています。仲介とローンの一本化、一気通貫。ここにITを絡ませながら進めていきたいと考えています。
もう一つが不動産の投資領域です。TERASSは、全体の7割が自宅用の取引で、残りの3割が投資用事業の取引です。投資用も今後伸びると思っています。TERASSは在庫を持たずにものを作る受注生産型のマンション事業を展開していくことを現在準備しています。これは今年中にローンチできると思います。この辺りが現在公開できる内容です。このほかにも、これから進行中のプロジェクトが他にも数件ありますね。正直、いまとても楽しいんですよ!
亀岡:いいですね。こうした計画を進めていく上で、チームの拡大が必要だと思いますが、具体的にどのようなチームや人材を求めていますか?
江口:全領域で採用を進めていますが、特に重要なのは、AI系の人材とプロダクトマネージャーです。
当社は単一のプロダクトだけを提供しているわけではないので、複数のプロダクトオーナーが必要な状況になっています。彼らの裁量権も大きいので、優秀な方を採用して、ダイナミックなプロダクトを「任せたい」と思っています。
AI系の人材については、本当に1年前と状況が大きく変わっていて、それに対して事業をどう適応させていくか。既存のビジネスに組み込むか、あるいはゼロベースで「現代ならこうあるべき」と考え直しながら進めるなかで、やはりAIのポジションは重要で、私たちもAIチームを立ち上げました。このチームの活躍が将来の競争力になっていくと思っています。
亀岡:採用候補者に向けたメッセージもお願いできますか。
江口:不動産は年齢によって身近さが異なると思いますが、多くの人にとってそれほど身近なものではないと感じています。でも、誰もが住居に住んでいて、いつかは住宅購入を考えるタイミングが必ず来ます。そして人生で一番お金を使うものは家なんですよね。
その一方で、私たちの生活に深く関わっているにも関わらず、この業界には非常に多くの非効率が存在しています。このマーケットに対して実際の取引データを持ちながらアプローチできるというTERASSの面白さは格別だと思っています。
「TERASSに来て人生が変わった」と言ってくれるエージェントの方もたくさんいますし、「そのエージェントと取引して本当に良かった」とお客さまに言っていただき、顧客満足度は98%と圧倒的な高さです。これは人の人生に大きなインパクトを与えられる事業だということの証明です。
やりがいも大きく、社会的意義も感じられる仕事です。非常に大きな社会的インパクトのある事業を作れていると思います。こういった環境で働きたいと思う方はきっとTERASSに合うと思いますので、まずはカジュアル面談でお話ししましょう。
亀岡:江口さん、ありがとうございました!
採用情報はこちら:https://terass.com/recruit/