どこにもないデータベースで勝負する~マイベストCSOに聞く、生成AI時代の「別価値」の作り方~

by 内丸拓

生成AIによってこれまでの常識が変わり、サービスが次々と誕生する新しい時代に突入しています。こうした時代に、生成AIが提供できない「別価値」によって成長を続けている企業が、今回紹介する「マイベスト」です。

マイベストは「インターネットで、“最高の選択体験”を実現する」をミッションに掲げ、選択に特化した情報サービス「mybest」を運営しています。今回、マイベストの魅力について、Chief strategy officer(以下CSO)を務める岸本裕史さんにお話を伺いました。成長を支える価値の作り方とは?そして他の企業との連携、M&Aまで、深掘りしていきます。

岸本裕史 執行役員CSO 兼 経営企画部長

新卒で(株)ディー・エヌ・エー入社。モバゲー全盛期のソーシャルゲーム開発部にてディレクター、プロデューサーとして、国内外向けゲーム開発に携わる。2017年に(株)メディカルノートに転職し、新規事業の立ち上げなどを手掛け、執行役員として従事する。2019年にPEファンドの立ち上げとともに、発行体である(株)イングリウッドに参画。事業M&A、アライアンス等幅広い領域で事業推進を行う。2022年に経営企画責任者として(株)マイベストに入社
内丸 拓 インベストメントマネジャー

General Electric(GE)を経て、経営共創基盤(IGPI)に参画。GEではヘルスケア/ エネルギー/ オイル&ガスの事業部門において経営企画・管理業務に携わり、IGPIではスタートアップから大企業までの幅広いフェーズの企業に対して事業成長/ 新規事業創出/ 事業再生の支援に従事。2022年5月よりZ Venture Capitalに参画

――ユーザーを魅了するマイベストとは

マイベストは、よりよい選択が行えることが、その人の生活を豊かにすると考え、“選択”という領域に特化した情報サービス「mybest」を提供しています。月間ユーザー数はGoogle Analytics(以下GA)上の数字で3,500万人を超える月もあり、ある程度大きなサービスになっていると自負しています。

マイベストの特徴は、市場で売られている商品を“商材別”に実際に購入し、専門家の知見を取り入れながらユーザーが気になる・求める要素について徹底比較していることです。

ここでいう“商材”とは、ドラム式洗濯機、とか、化粧水、のような一定数の商品をグルーピングする区分です。ドラム式洗濯機でも10種以上購入していますし、化粧水やコスメ系は数十~100種類近くになることもあると思います。

直近のマイベストの商品購入ペースは毎月2,000点ほどになりますが、ざっと見積もっても市場で売られている主要商品は数万点に登ります。常に最新情報を得るためこの主要商品を全部カバーしようとすると、まだまだ全然購入ペースが足りておりません(笑)

――生成AIに作り出せない「どこにもないデータベース」の価値とは

なぜ私たちが実際に商品を購入するのかというと、「商品を触らないとわからない情報」がたくさんあるからです。

もし自分が気になる商材があった際、売られているものを全部使って試せる環境があったら、シンプルに「時間があれば行ってみたいな」って思いませんか?

更にそこには本当にその商材が好きな人と専門家がいて、何でも知りたいことを聞くことができる。しかも、過去に使った人たちの満足度もちゃんと記録されている。そういった情報を参考に、自分にベストな商品を探せたら最高の選択体験になるのではないか?と考え、そうした環境をインターネット上でサービスとして擬似的に提供しているイメージです。

現状、ユーザーが直接試す、というところまでサービス提供はしていませんが、直接商品をさわった結果、分かった情報、比較した結果の満足度評価をユーザーの皆さんに伝えているという、ある意味当たり前の発想で勝負しています。

また、前述のような「徹底比較」の結果は、選び方、商品情報、評価を含め情報としてデータベースに整理しています。これを生成AIの立場から解釈すると、マイベストは、物理世界で”選択肢のDB”を文字通り創出しているので、少なくともすぐに代替できるようなものではない、と考えています。

もう一点、マイベストでは生成AIによる代替が難しいと考えている点があります。商品を使ってみた情報というものには、例えば「口コミ」があります。生成AIは、既存の情報を元に学習しているため、口コミで見られるようなステマ等の信頼性が低い情報も、生成AIは良くも悪くも学習してしまいます。

しかし、マイベストの徹底比較はこの口コミと一線を画す要素があり、本質的な違いがあります。

例えば内丸さんが、今使っているパソコンの口コミを書くとします。内丸さんはこのパソコンを使っていて満足しているので「星5」だと思う。これは別に嘘でもなく、ステマでもないわけです。良い口コミです。

ただ、この口コミには落とし穴もあります。もしかしたら、内丸さんはこのパソコンしか触ってない、もしくは数少ないパソコンしか触っていない可能性が十分にあります。実際に他のいくつかのパソコンを使ってみると、「やっぱりこっちのほうが良い」となり、星5の評価が星3になる可能性があります。市場で売られている主要なPCを全部比較したうえで口コミを書く人は稀です。むしろ、そんなお金や時間をかけるのは現実的ではないと思います。

一方でマイベストは、こういう通常ではやらないこと、市場で売られている他の商品を全部買い、触った上で、商品の各特徴に対しての満足度を横並びですべてつけ、徹底的に比較したうえでわかることをユーザーさんに提供しています。

こうした「どこにもない選択肢のデータベース」を作ること、そしてその大量で質の高いデータベースを制作するオペレーションを構築することが、マイベストがこれからも勝負していく「価値」だと考えています。

――生成AI時代で、AIと人間がやるべきことは

マイベストが考える生成AIとの付き合い方は、AIが出来ることは全部やってもらい、絶対に人間がやらなければいけない「まだデジタル化されていない物理世界の情報の充足」や「物理的な徹底比較による満足度評価」の部分を、泥臭く実現して付加価値を出したいという考えです。

例えば、ロボット掃除機を評価しようと思ったときに、実験室で様々なものを吸わせますよね。純粋に吸引力や性能だけを調べようと思うと、AIが中心となって実験することも出来ると思います。

でも、実生活ではたしてこのロボット掃除機が使えるのか、を調べようと思うと、生活空間や雑多な場所をつくって、そこで動かしてみて何が起こるのかを実験で観察する。さらに、その動きをどう感じるか?満足するか?ということが、私たちが必要と考えることです。これって人間がやらないと気がつかないことですよね。

また同じ商材でも使う目的別に比較方法が変わります。同じ商品を探るにしても、様々な使い方をする人を想定したら、色々と比較すべき項目や状況が変わる。これは人間が徹底比較をやっていくべきポイントだと思います。

繰り返しにはなりますが、マイベストでもAIは活用すべき必須技術と考えています。現場でも、AIが得意な「統計」や「業務の効率化」の面は、どんどん取り入れていきたいです。現場でもどんどん試して使えることを探しているという感じです。

一方で、プロダクトとかコンテンツに直接、使えるところはまだテスト中です。クオリティの差があったり、構成のミスもあったりします。でもバンバン使っています。逆に言うと出ているツールを全部試すだけでも結構大変ですね。

――成長を支える今後の採用と事業連携は

マイベストは海外への積極的な展開をしていて、述べ人数かつGA上の集計ではありますが月間約1,000万ユニークユーザーという大きな数字になっています。

そのため、今後も優秀な方をグローバルで積極的に採用していきたいと考えていますが、今はアイデアさえあれば起業する選択肢もあるので、優秀な人材を「囲い込む」というのは無理だと思っています。でもそうした中で「マイベストをどう使うか」と考えてもらうことで、優秀な人材に様々なアプローチが出来ると思っています。

最初に述べたように、資金力があるなかで商品を購入、様々なシチュエーションで利用するという点においてAIには真似できない、他にはない一次情報の「データベース」に触れることが出来る。これはマイベストの魅力の土台だと思っています。

そして、これは採用に限った話ではなく、他の企業起業と連携、協業することも視野に入っているので、「マイベストってこんなおもしろい一次情報を持っているんだよ」ということが多くの方に伝わっていければと考えています。そうした中で、連携のために出資、M&Aも選択肢として考えることが可能です。

特に今私たちマイベストにとって商品検証をする設備や施設が重要で、そうした最高峰の環境を持った企業と一緒に仕事をしたいと思っています。

消費者庁が商品異常があったときに検証できる施設を公開していますが、今マイベストには自前の物はなく、スポットで利用させていただいているだけです。これを自分たちで施設をつくって、研究者を雇って、となるとかなり時間がかかってしまいます。なので、そういう各設備との連携を深め、新商品の取扱説明書を一緒に低価格で作成する、などいろんな展開を構想しているところです。

これからも飛躍的な成長を、ぜひ皆さんと一緒に実現したいと思っています。一緒に新しい世界をつくっていくパートナーとの出会いを、これから楽しみにしています!

カジュアル面談、アライアンス、M&A、事業相談などの窓口

・岸本 裕史CSO ツイッターアカウント @yjksmt(https://twitter.com/yjksmt

・マイベスト採用ページ(https://my-best.com/company/about/