Cinchへの投資

by Daniel Song

– なぜ私たちは、アジア最大のDaaSプラットフォーム「Cinch」に投資したのか

東南アジアでは、消費者がスマートフォンやPCなどの電子機器を手に入れることが長年課題となってきました。高額な初期費用、限られた決済手段、そして柔軟性のない既存モデルなどが障壁となり、何百万人もの人々が必要なデバイスにアクセスできていないのが現状でした。企業にとってもIT資産の管理は非効率であり、多額の設備投資(CapEx)が必要となるため、事業を柔軟に拡大することが難しくなっていました。

私がCinchのチームと出会ったとき、彼らがこの問題の本質に真っ向から向き合っていることが伝わってきました。テクノロジーが私たちの生活やビジネスにとって欠かせない存在になる中で、その恩恵にアクセスできない人々との間にある「格差」はますます広がっています。自動車やソフトウェア、エンタメ分野では、リースやサブスクリプションといった柔軟な利用モデルが浸透している一方で、電子機器の世界はいまだに「所有」が前提の古い構造にとどまったままです。こうした中で、Cinchは東南アジアを拠点に、電子機器を月額制で提供する「Device-as-a-Service(DaaS)」という新しいアプローチで、この固定観念を打ち破ろうとしています。

初期費用なしでスマートフォンやPCを利用できる仕組みにより、個人や企業が手頃な価格でテクノロジーにアクセスできるようになります。また、企業向けには、デバイスの調達から管理、保守まで一貫してサポートするIT資産管理ソリューションを提供し、効率的な事業成長を支援します。私たちがCinchのビジネスを深く理解していく中で、特に印象的だったのは以下の3つの点です。

1. 拡大するほどに強くなるビジネスモデル

Cinchは、ただ課題を解決するだけでなく、成長するほどに効率性が増す仕組みを構築しています。多くの企業では、事業がスケールするにつれてコストが増えるのが一般的ですが、Cinchは大手のOEM(電子機器メーカー)や関連プレイヤーとの強固なパートナーシップにより、調達、資金調達、資産活用の最適化を可能にしています。さらに、デバイスを再活用し、ライフサイクルを延ばす「循環型モデル」を採用することで、ユーザーが増えるほどプラットフォーム全体が効率化されていく構造となっています。

2. 持続可能性と収益性が両立する金融モデル

この分野の多くのファイナンスモデルは、個人の信用力に頼りがちで、その結果、高リスク・高デフォルトの融資を招いています。Cinchはまったく異なるアプローチをとっており、デバイス自体を担保とする「アセット・バックド・ファイナンス」に加え、組み込み型のデバイスセキュリティを活用することで、リスクを抑えながら健全なユニットエコノミクスを実現しています。このモデルは、単なる「利用機会の提供」にとどまらず、消費者と投資家の双方にとって持続可能な成長への道筋を描いています。

3. 実行力を備えたチーム

Cinchの経営陣は、事業を効率的にスケールさせるノウハウを熟知しています。Mahir Hamid氏は、プライベート・エクイティや資産集約型ビジネスに関する深い知見を持ち、Binh氏とHisham氏は、大手BNPL(後払い)企業でリスクモデリングシステムの構築に携わってきた経験があります。重要なパートナーシップの構築や資金調達の最適化、そして徹底したオペレーションの実行力により、Cinchには市場のリーダーへと駆け上がるための明確な道が見えています。

Cinchは、テクノロジーへのアクセスのあり方を根本から変え、「手頃に」「柔軟に」「持続可能に」を実現しようとしています。

だからこそ、私たちはCinchに投資しました。Cinchは、東南アジアにおけるテクノロジーとデバイス市場の変革を牽引する存在になると、私たちは確信しています。

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