毎日750万人が使うSetlogは、なぜ若者の日常になったのか。創業者が語るプロダクトへのこだわり
今回、Z Venture Capital(以下、ZVC)は、「Setlog」を運営するNew chatに出資しました。1時間に1回、いまの自分を記録して友人と見せ合うSetlogは、日本や韓国の若い世代を中心に急速に広がり、日本ではApp Storeランキング1位も獲得しています。
一見、こうしたサービスは一時的なブームと見られがちですが、Setlogは「日常の習慣」をつくるプロダクトだと考えています。なぜユーザーはこれほどSetlogを大切にするのか。元Snapのデザイナーでもある創業者Devin Dotyに、出資を担当したZVCの北畑 絹子が話を聞きました。ユーザーデータを集めないという選択、UI変更が炎上した日の決断、わずか4人のチームとAIの使い方、そしてアメリカへの挑戦まで、Setlogの裏側にある想いに迫ります。
【対談者】
Devin Doty(New Chat CEO)/ Kinuko Kitabatake(Z Venture Capital)
Snapでの経験から生まれた、親しい人とつながるSNS
Kinuko: Devin、久しぶりです。会えて嬉しいです。最近は毎日のようにSetlogのアップデートや新機能がリリースされているように思いますが、とても忙しいんじゃないですか?
Devin: ええ、今月(10月)も新しいものがたくさん出たので、かなり忙しいですが、ユーザーの反応が楽しみです。
Kinuko: それもぜひ詳しく聞かせてください。まず、最近のSetlogの勢いはどうですか?
Devin: かなり安定して伸びています。毎日、「アプリを開いた人」の数は、8月は1日あたり約650万人、9月は約750万人です。最近は毎月100万人ずつくらい増えているイメージです。
Kinuko: すごいですね。利用者の多くは日本ですか?
Devin: はい。最近、アメリカでもトライアル運用を始めましたが、現状の最大の市場は日本です。
Kinuko: 日本では本当に急激にユーザーが伸びましたよね。Setlogは一過性のブームではなく、人々の日常に新しい習慣を生み出すプロダクトだと考えています。今日はその背景にあるDevinの考えを、ぜひ詳しく聞かせてください。
Devin: 僕らも「長期的に定着するプロダクト」だと考えています。
Kinuko: 私はZVCのサンフランシスコオフィスでコンシューマー領域の投資を担当していますが、いま市場では生成AIのコンテンツやAIを活用したアプリがあふれる中で、特に若いユーザーの中には「リアルなもの」や「自分にとって本当に意味のあるもの」を求める傾向に回帰していると思っていて、Setlogはまさにそれに当てはまると感じています。
Devin: そう言ってもらえて嬉しいです。Setlogを始めた経緯ですが、いろいろな要素があります。私はSnapchatで長く働いていて、Tumblrでも働き、過去に2回起業に挑戦しました。デザイナーとしての自分はいろんなことに興味があって、理想を言えば「家具」を作りたいくらいなんです。
Kinuko: そうなんですか?
Devin: 「これは絶対に理にかなっているのに誰もやっていない。じゃあ自分がやるべきかも」という強い直感が働くんです。Snapchatでの期間、彼らが苦戦する姿も間近で見ていて。その失敗から本当に多くを学びました。同時に、コアのプロダクト自体は心から良いものと信じていました。そういうすべてがSetlogにつながっています。
そして、「あれ、日本にはこのようなプロダクトがないな」ということに気づいたのです。日本ではSnapchatが定着しなかったですよね。それがずっと興味深くて。Snapchatは日本市場にあまり力を入れていなかったんです。「これは面白い。いつかここで仕掛けられるかもしれない」とメモしていました。
Kinuko: そのメモが今に繋がっているのは興味深いです。いまこの記事を読んでいる人の中でも「Setlogって何?」という人もいると思います。人によっては、ソーシャルメディアとかvlogアプリと呼んでいますが、Devinは「ビジュアルコミュニケーション」と表現しますよね。ビジュアルコミュニケーションとは何なのか、そもそもSetlogをどう説明しますか?
Devin: いい質問ですね。Setlogのことは、僕らは「continuous presence (継続的な存在感)」と呼んでいます。これは一日を通して、離れていてもその人と一緒にいるように感じられる。それをアプリの他の部分にも広げようとしています。テキストなら長々と書かないと伝わらない情報を、動画や写真で伝える。
従来のソーシャルメディアであるようなメッセージだけではなく、写真や動画でコミュニケーションを始めたとき、相手との距離が一気に縮まる感覚がありました。普通なら絶対に見られないものが見える。相手のオフィスの様子とかペットの姿とか。親密度がまったく別のレベルに感じられました。だから僕にとってのSetlogは、親しい人との「continuous presence」であり、その土台は写真と動画によるビジュアルコミュニケーションです。
Kinuko: ユーザーとして、それは本当に実感します。今年の夏休みに、友達と旅行した時に全員でsetlogを使って、とても楽しかったんです。始まりはすごく自然で、最初は夫とだけ使っていたんです。友達に宣伝する気はなかったんですが、向こうから「私たちも入れて」と言われて、みんなで使い始めました。気づいたのは「あまり意識せずに使える」ということですね。

Setlogのカメラ・投稿・チャットの様子
他のSNSで動画を投稿すると、何人が見たか、何を言われているか、すごく気になることがあります。でも、Setlogが良いのは、投稿した後のことを考えなくてよいことです。加工する必要もないので、ただその場を撮るだけで、忙しいときやその場に集中しているときは見なくていい。そして、旅行からの帰り道にみんなで見返して「本当に楽しかったね」って思い出を共有できて。
Devin: いいですね。
Kinuko: それとDevinは、「Setlogを、後から見返したくなるカメラロールのようなものにしたい」と以前言っていましたよね。ここにすごく共感しています。Setlogをグループ旅行で使うと、他の人の視点から見た自分が残る。これはすごく新しくて特別だと思いました。
Devin: ネタバレしたくないんですが、その領域でも面白いものを用意しています。今後のアップデートを期待してください。
「1時間に1回」はユーザーがつくった?
Kinuko: それから投稿頻度の設計についても聞きたいです。BeRealは1日1回ですが、Setlogは1時間に1回で、スキップもできる。毎時間の投稿だと特別な瞬間である必要がなくて、本当に普通の瞬間でいいですよね。あの1時間という設計、そしてSetlogを今の形にした考えは何だったんでしょう?
Devin: 1時間については、実はもっと自由にしようと、緩めようとしてきたんです。でも「1時間ごとに通知をくれ、毎時間必ずやる」という人もいれば、「通知はいらない、好きなときにやらせて」という人もいる。両方に応えるのは難しいですよね(笑)。
毎時間という仕組みはSetlogの初期バージョンから来ています。ユーザーがInstagramでやっていたことから派生したものでした。僕らはこれを「市場への最初のフック」と考えていました。毎時間の仕組みでこのプロダクトを作れば、ユーザーがそれをInstagramに投稿して、オーガニックな拡散の回転が回る、と。半年以上経った今も、毎時間と通知はそのままです。緩めようとすると、ユーザーが本気で怒るんです。「それはプロダクトの核であって、絶対に変えないで」と。Instagramの24時間ストーリーを変えようとするようなもので、もはや土台なんです。
面白いのは、Setlog自体がそもそもユーザーたちが生み出した使い方から派生していて、僕らはそれを簡単にするプロダクトを作っただけだということ。「1時間の仕組みは僕らが発明した」とは言えないです。ユーザーと一緒に何が大事かを探りながら進めています。もちろん将来的には、もう少し自由になる道もあるとは思っています。それを出すのが楽しみです。
Kinuko: すごく興味深いポイントですね。ユーザーが欲しいものと、自分がプロダクトのDNAだと信じるもののバランス。ファウンダーとしてPMF(プロダクトマーケットフィット)を追うのか、自分の信じるものを作るのか。これはすごく難しい問題だと思いますが、どうバランスを取っていますか?
Devin: それは一番難しいことのひとつだと感じています。最近も大学のキャンパスで調査をして結果が返ってきたんですが、今作っているものに関わる内容で、「使わない」と言う人もいれば「使う」と言う人もいる。フィードバックをもらっても、見極めるのは難しい。
ただ、僕の中では今も「人間の根源的な価値」が軸です。親しい人から写真が届いたら、純粋に嬉しい。それは根源的に人間的なことだと思う。だから僕らが向かう先のほとんどは、その根源的な「近さ」です。
もちろん途中でつまずきもしました。初期にリデザインをして、ユーザーに本気で嫌われて、星1レビューが大量に来ました。これが意味するところは、みんなSetlogを特定の形で捉えているんです。「Setlogは1時間に1回、1枚ずつ」という。その時、私たちはそこには「触らない」と心に刻み込みました。
星1レビューが殺到した日、Devinが選んだ決断
Kinuko: グループの人数を増やすためにUIを変えた際に、SNSでもユーザーから反応が大量にありましたよね。高校生や中学生と思われる子たちが、UI変更に本気で怒っている投稿をたくさん見ました。私たちはちょうど投資検討している最中でしたが、女子高生たちがUI変更にあそこまで怒るのは、アプリがどれだけ彼女たちの日常になっているか、どれだけ大切にされているかの証明だと思いました。あの日、チームの中では何が起きていて、どう意思決定したんですか?
Devin: 実は、あのとき最初にメッセージをくれた人のひとりがKinukoでした。だからはっきり覚えています。その後「ロールバック、よくやった」とフォローもくれて、ほっとしました。僕のスマホにはレビューの通知が来るんです。星1、星5、と。星1レビューが大量に来始めました。サポートのメールも個人的に受けていて、普段はユーザーから1日50通くらいのところ、あの期間は数千通になったと思います。「これは嫌だ」という、あまりに明確なシグナルでした。

当時の反応の一部。ユーザーからはアップデートに対する不満の声とともに、元に戻すと安堵の声が(*変更後のUIは2026年10月のもので、変更が発表された7月時点とは多少異なります)
このプロダクトの歴史の中で、おそらく一番ストレスフルな期間でした。サーバーがキャパシティで落ちたことも何度かありましたが、UI変更の時が一番きつかった。ロールバックして、リリースして、メールに返信して、「元に戻します」とみんなに伝えて、たぶん2日くらい寝ていません。
当時の私たちには見えていませんでしたが、ユーザーがこのプロダクトに本気で情熱を持っていて、本当に大切にしていて、毎日使ってくれている。「本当に大事なユーザーがいる」という明確なシグナルでした。
Kinuko: そのあとすぐにUIを戻しましたよね。すぐ元に戻したことは本当に好意的に受け止められていました。「UIが戻った」みたいな投稿がバズって、みんながリポストして反応して。ユーザーも「ちゃんと私たちの声を聞いてくれる」と感じたんだと思います。他のアプリと比べても、あれは際立っていましたね。しかも当時、Setlogほどの規模のアプリが3〜4人のチームで運営されているなんて、誰も知らなかった。あの速いフィードバックは本当に評価されていましたよ。
Devin: 今でもApp Storeのレビューでそういう声をもらいます。「このチームは直すのが本当に速い。ありがとう」って。僕らはAIを活用して少人数でとことんやります。でも、これはどんどん当たり前になっていくと思います。今日でさえ、Xで見かける「1日にリリースされるプロダクトの数」は1〜2年前よりはるかに多い。毎日起きる新しいことの量に圧倒されるくらいです。
Kinuko: 特にアメリカでは毎日のように目まぐるしい変化が起きていますよね。
Devin: AIがどんどん仕事をするようになっているのに合わせるように、ここでは全員がこれまで以上に働いています。
Kinuko: あなた自身もその最前線にいますよね。
Devin: 進歩してものを良くしたいという性質が僕らの中にあるからだと思うんです。僕はその部分が人より強いのかもしれません。毎朝起きて、何かを良くしたい、前に進めたい、と常に思っている。ストレスがあります。でも、すごく報われる感覚もある。一日の終わりに振り返って「ここが格段に良くなった。これは満足だ」と言えるのが本当に好きなんです。ほとんどの日は何もかもに不満で、それが翌日もっと良い仕事をする原動力になる。ストレスとは折り合いをつけて、「これは自分を前に進めるための仕組みなんだ」と考えるようにしています。
「何も取らない」という難しい道
Kinuko: Devinは、Setlogをユーザーにとって安全な場所にすることを、とても大切にしていますよね。ユーザーデータを集めず、招待を広げるためのアドレス帳へのアクセスや、基本的なデモグラフィック情報すら取得しない。正直、私たちもデューデリジェンスでは苦労しました(笑)。
多くの企業が成長のために集めようとするデータを、あえて手放している。でも、その選択がユーザーにとって安心できる、ありのままを投稿できる空間につながっていると思います。そこにはどんな考えがあるのでしょうか。
Devin: 良い質問です。根底にあるのは、「自分たちが使いたいプロダクトをつくる」という考えです。僕は、あらゆるデータを集めようとするプロダクトに囲まれて育ってきました。何かを防ぐためにはオプトアウトしたり、プライバシー設定を細かく確認したりしなければいけない。
だからSetlogを始めるとき、まず「自分たちは、このアプリに何を見られたいのか。何を取りたいのか」と考えたんです。答えは「何も」でした。友人や家族にも「安心して使っていいよ」と言えるプロダクトにしたかったんです。
もうひとつは、韓国でのローンチです。韓国市場でデータプライバシーの問題を起こしたら、それだけで終わってしまうと思います。だからリリース前から、この点は徹底していました。
それから、僕らの会社には「あえて難しい道を選ぶ」という考え方があります。その先にこそ、より良いものがあると思うからです。
例えば地図アプリなら、起動時に広告を5秒間表示すれば収益を得られるかもしれません。でもユーザーは、一刻も早く地図を見たいわけです。本当に難しいのは、ユーザーの体験を損なわずに、別の方法で収益を生み出すことです。Setlogでも、僕らはできるだけ難しい方の道を選びたい。その方が、長く使われる、より強いプロダクトになると信じています。
Kinuko: とても共感します。例えば、ユーザーは必ずしも「このアプリは暗号化されているから使おう」と考えるわけではありませんよね。
でも、プロダクトに対するDevinの哲学は細部に表れている。ユーザーは、それを感覚的に受け取っていると思います。「なぜか安心できる」「これまでのアプリとは何かが違う」と。
一方で、ソーシャルアプリは規模が大きくなるほど、他人からどう見られるかを意識したり、人間関係に負担を感じたりする場所になりがちです。日本ではSetlogはBeRealと比較されることも多いですが、DevinはこうしたSNSの課題をどう考えていますか。
Devin: 僕の中では、Setlogと従来のソーシャルメディアの間には、はっきりとした違いがあります。そもそもプロダクトの構造が違うんです。
僕らは、むしろDiscordに近いと思っています。
Discordには、同じ趣味を持つ人たちと安心して過ごせるルームもあれば、知らない人たちと交流するためのルームもある。Setlogも、それに近い構造です。
例えばInstagramでは、一度つながった相手との関係が続いていきます。相手を外すべきか、ブロックすべきか、親しい友達に入れるべきか。そうしたことが新たな悩みになることもあります。
一方、Setlogでは、自分がつくるスペースごとに人間関係を分けられます。親しい人だけの安心できる場所もあれば、知らない人と交流する場所もつくれる。
もし居心地が悪くなったら、そのルームを出ればいい。プロダクトそのものを離れる必要はありません。この違いは、僕らにとってとても重要なんです。
良いものをつくるために、エゴはいらない
Kinuko: Devin自身についても聞かせてください。
私がNewchat(Setlog)への投資に確信を持てた理由のひとつは、デューデリジェンスの過程で、Devinがとても正直だったことです。コンシューマープロダクトへの理解は圧倒的で、基本的なデータや分析も揃っていました。でも同時に、「分からないことは分からない」と率直に話してくれた。
ピッチが上手な創業者はたくさんいます。それも大切な能力ですが、私はDevinのそういう姿勢に強く惹かれました。だからこそ聞きたいのですが、Devinは自分自身をどんな人間だと思いますか。何をいちばん大切にしていますか。
Devin: 今日のインタビューでは、ZVCが投資を決めてくれた理由を次々と教えてもらっていますね(笑)。知らなかったことばかりで面白いです。
難しい質問ですが、僕の核にあるのは「何があっても、本当に良いものをつくる」ということだと思います。
自分より優れた人がいたら、僕はいつもその人に惹かれてきました。嫉妬したり、張り合おうとしたりするのではなく、「どうすれば、このプロダクトをもっと良くできるか」を考えるんです。
だから投資家と話すときも、自分を飾る必要は感じませんでした。僕のキャリアでは、仕事そのものが自分のことを語ってくれたと思っています。「これは僕がつくった」と声高に主張したこともありません。
会議に行き、成果を見せ、また仕事に戻る。その繰り返しでした。結局、僕にとって大事なのは自分の名前ではなく、つくっているものそのものなんです。だから「これが僕らのプロダクトです。投資したいですか」と、そのまま見せられる。断られても、それで傷つくことはありません。次に進むだけです。
4人のチームとAIが変えるプロダクト開発
Kinuko: その考え方は、チームづくりにも表れていると思います。Setlogは今も、とても小さなチームですよね。4人ですか?
Devin: ええ、4人です。
Kinuko: 4人で数百万人が日常的に使うアプリを運営しているのは、本当に珍しいことです。
AIの進化によって可能になった部分もあると思いますが、チームをつくるうえで大切にしていることは何ですか。少人数を維持しているのは意図的なのでしょうか。
Devin: まず、採用するときに伝えているのは、「会社とプロダクトがいちばん大切で、誰がつくったかは重要ではない」ということです。「この人がつくった」ではなく、「Setlogがつくった」と言われる。それでいいんです。
自分の名前や個人のブランドを前に出すことが最優先なら、このチームには合わないかもしれません。その考え方があるからこそ、僕らはプロダクトを良くすることに集中できます。もちろん、社内では誰が何を成し遂げたか、みんな分かっていますし、お互いに評価しています。でも外に向かって自分たちを主役にする必要はありません。
2つ目は、エゴのない人を採用することです。人の意見を聞けて、フィードバックを受け入れ、より良いものをつくるために動ける人です。
そして3つ目は、全員が自分の手でプロダクトを前に進められること。僕らは全員が「Individual Contributor(個人として実務に貢献する人)」です。デザイナーがコードを書きたければ、書いていい。役割に縛られず、全員が自分で判断して行動する権限を持っています。一方で、お互いにフィードバックし合い、会社としての大きな目標は共有しています。
Kinuko: そういう人たちは、どうやって見つけたんですか?
Devin: 実は、これまで採用したメンバーは全員、向こうから連絡をくれた人たちなんです。
「どうしてもSetlogで働きたい」「このプロダクトに貢献したい」と。プロダクトに情熱があって、自分の力で仕事を進められる人なら、とてもうまくいきます。
そして、AIの存在も大きいですね。特にバックエンドの体制は、かなり面白いことになっています。AIを専門にするメンバーがいて、システムが自動的に問題を修復する仕組みをつくっているんです。AIは性能が上がるにつれて、使う範囲もどんどん広がっています。
僕自身は主にCodexを使っていますし、チームにはClaudeを使うメンバーもいます。GPT-6以降、活用する場面がさらに増えて、毎日のように驚かされています。Androidアプリの開発には、ほぼ全面的にAIを活用しています。
一方で、iOSアプリは今もかなり手作業です。UIはすべて僕がFigmaでデザインしています。細部まで完璧に仕上げたい部分は、今でも自分の手でつくっています。
ただ、AIに任せる範囲は確実に広がっています。例えば、Setlogのアクティビティ画面には、誰かがリアクションすると表示される小さなバブルがあります。でも、あのバブルには表示するときも消えるときもアニメーションがないんです。以前の僕だったら、弾むように現れて、自然に消えていくアニメーションを必ずつくり込んでいたと思います。
でも今は、やることがあまりにも多くて、ひとまずそのままにしています。後から「どうしてあれで良しとしたんだろう。以前なら絶対に考えられなかったのに」と思いました。いずれ直すと分かっているからかもしれませんが、自分がどれだけ多くの作業をAIに任せるようになったのか、改めて感じた出来事でした。もちろん、本当に大切な部分は今も自分の手でデザインし、コードを書いていますけどね。
Kinuko: すごく分かります。AIはコーディングだけでなく、デザインやコンテンツ制作でも日に日に進化していますよね。でも私は、最終的には人間の「こうしたい」というビジョンが必要だと思っています。AIは、そのビジョンを実際のプロダクトにするための強力な手段です。でも、何をつくりたいのかという核の部分は、人間から生まれなければいけない。
Devin: 本当にそうですね。僕は昔から、コーディングはものづくりの中でも特に苦痛なプロセスだと思っていました。とにかく時間がかかるんです。AIがそこを大きく加速してくれたことには、本当に感謝しています。

次なる挑戦は、競争の激しいアメリカ市場
Kinuko: 最後に、Setlogの未来について聞かせてください。
今後はアメリカ市場への展開を計画していますよね。日本とは違い、アメリカはコンシューマーアプリの競争がとても激しい市場です。
一方で、こちらの学生たちと話していると、「アプリはたくさんあるのに、本当に自分に合うものが見つからない」という声も聞きます。Devinは、アメリカ市場の可能性をどう見ていますか?
Devin: まず、アメリカでうまくいくかどうかは、まだ分かりません。
「日常のログを残す」という行為そのものが、アメリカより東アジアの文化に合っている可能性もあります。横向きのカメラが受け入れられるかどうかも含め、テストが必要です。
ただ、アメリカにも、新しいプロダクトが勝負できる余地はあると思っています。
これまで多くのアプリが登場しては消えていくのを見てきました。そのたびに、「ここを変えていればよかったのに」「ここで判断を間違えたのではないか」とメモしてきたんです。
だから、自分なりに考えてきたことはたくさんあります。でも、最終的に大切なのは、ユーザーが「これは何かが違う」と感じてくれるかどうかだと思います。
そうした成長は、時間がかかるかもしれません。でも、ユーザーに深く定着し、時間とともに価値が高まっていくプロダクトにしたいんです。
Kinuko: 皆さんの挑戦を私も大いに期待しています。
Devin: もちろん、簡単な挑戦ではありません。
僕らは小さな魚で、周りにはサメがたくさんいます。しかも、そのサメたちはものすごく賢くて、暗視ゴーグルまで持っているような相手です(笑)。アメリカのコンシューマーアプリは、ユーザーをどう獲得し、どう使ってもらい、どう定着させるかを熟知しています。
僕らは、そのために一般的に使われる手法の多くを、あえて使わないと決めてスタートしました。だから、はるかに難しい挑戦になるでしょう。それでも、アメリカで本当に成長したいと思っています。まずは挑戦して、何が起こるのか、自分たちの目で確かめたいですね。