【後編】情報の非対称性をなくしたい。ピンチをチャンスに変えたアソビューCEOに聞くアフターコロナのニーズとは

2020年6月、 Z Venture Capital(以下、ZVC)は「生きるに、遊びを。」をミッションとし、「遊び」が衣食住に並ぶ人生を彩る豊かなものとして、Well-Beingな社会の実現を目指すアソビュー株式会社(以下、アソビュー)に出資いたしました。

前編ではコロナ禍でピンチに立たされたアソビューの苦境と、なぜZVCがアソビューに投資を決めたのかを中心にお伝えすることで、アフターコロナのアソビューの可能性をお伝えしました。


前編はこちら

今回はアソビューCEOの山野智久さんに、同社のサービスが社会に与えるインパクトついてお話していただきます。

【山野智久】

明治大学法学部卒。2011年アソビュー(株)創業。レジャー×DXをテーマに、遊びの予約サイト「アソビュー!」、観光・レジャー・文化施設向けバーティカルSaaS「ウラカタシリーズ」を展開。観光庁アドバイザリーボード、経済同友会観光再生戦略委員会副委員長。著書「弱者の戦術」(ダイヤモンド社)

アソビューが解決するユーザーと事業者のペイン

インタビュアー

「アソビュー!」と「ウラカタシリーズ」、それぞれのサービスは誰のどんなニーズを満たすとお考えですか?

山野

「アソビュー!」は、休日に家族や・友人・恋人同士と遊びに行きたいけれど、どこに行ったらよいかわからないというニーズにお応えするものです。これまでもお出かけ情報はありましたが、情報が分散していて、必要な情報を集めるのに手間がかかっていました。情報を一元化したものがあれば、ユーザーの手間は省けるし、予約や購入の取引コストも下げられます。

toBの「ウラカタシリーズ」は、事業者向けのSaaS(Software as a Service)です。レジャーや遊びを提供している事業者は小規模なところから大手まで事業規模がさまざまです。小規模の事業者においては、DXや生産性の向上が必要なことはわかっていても、システム投資できるほどの体力がないこともめずらしくありません。それなら、アソビューがとりまとめてシステム開発・提供をすれば、小規模の事業者も最新の技術を取り入れられると考えました。

学生時代に気づいた「情報の非対称性はビジネスになる」

インタビュアー

創業のきっかけをお聞かせいただけますか?

山野

まず、なぜマーケットプレイスをやろうと思ったのか、からお話します。マーケットプレイスをやろうと思ったのは学生時代に起業したとき、情報の非対称性に気づいたことがきっかけです。

そのときやっていたのは、千葉の柏でフリーペーパーを作ること。柏にも素敵なビンテージの古着屋さんがあるのに、地元の学生は知りませんでした。地元のトレンドに敏感な学生はみんな原宿に行っていましたね。

なぜこういうことが起こるのかというと、みんな都内に匹敵するおしゃれなお店が地元にあることを知らなかったからです。知らないがゆえに機会損失が起こっていることに気づき、フリーペーパーを創刊しました。地元のお店やカフェに人が集まり、累計30万部を発行するまでになりました。世の中には情報の非対称性がある。これはビジネスチャンスがあることを実感した経験でした。

これは新卒で入ったリクルートも同じでした。同社は求人情報を集約することで就職のミスマッチによる不幸を減らしていますね。

みんな旅先のすきま時間の過ごし方に困っている

インタビュアー

そこから、どうして遊びをテーマにしようと思ったのでしょう?

山野

アソビューのミッションは「生きるに、遊びを」です。これまでは、衣食住などの生活を支えるものが充足していれば幸せになれる時代でした。ところがこれからは、ものがあるだけではなく心も豊かになることが求められるようになっています。

ワクワクすることや、好きな人と素敵な時間を過ごすことの重要性が高まっています。

僕自身の原体験は、旅行先ですきま時間の過ごし方で困ったことです。ホテルを予約するのは簡単ですが、チェックインとチェックアウト後の中途半端に空いた時間の過ごし方で困ったことはありますよね。

ホテルや旅館にちらしは置いてあるんですが、時間が短すぎたり、長すぎたり、あるいは事前に持っていかなければいけないこと、たとえば水着などが多い遊びがほとんどであることに気がつきました。現地に情報はあるけれども、ネット上に情報がない。これは情報の非対称性で、不便だなって。これを解消することで社会に貢献できると思いました。

ビジネスがわかる人がサポートすればもっと幸せになれる

インタビュアー

山野さん自身の思いがあってはじめられたのですね。

山野

そうですね。地方のレジャー施設にはすごくいい人たちがいるんです。川のレジャーだったら、毎年ボランティアで川の清掃をしているところもあります。川で商売させてもらっているから、という思いをお持ちなんです。

彼らは自然と接する機会も多いので、10年後、20年後の地球環境のことを考えて自分たちができることから取り組んでいます。伝統工芸のジャンルなら、伝統工芸が人に与える価値を信じているとか。都会の人だったら、なかなか思わないようなことを日々感じていらっしゃる方も多く、人として僕はリスペクトしています。

でも、売上や営業利益を聞くと全然うまくいっていない。このままだと続かない。お金は後からついてくるからとは言うものの、その状態で10年経っているなんていうことも。ビジネスがわかる人がサポートすれば、この人たちはもっと幸せになれるんじゃないかと思いました。

休日を楽しく過ごせることには価値がある

山野

「アソビュー!」の立ち上げ期にはコールセンターで、僕が電話を受けていました。ある日受けたのは、伊豆でスキューバダイビングしたいという相談です。よくよく聞いてみると、彼女との記念日に何か新しいことをやってみたい、とのこと。それなら、その方の家の近くにある長瀞のラフティングに行ってみたら?とご案内しました。

そしたら、後で「すごく楽しくて、いい記念日になりました」というメールをいただきました。休日を楽しく過ごせることには価値がある。こんなに喜んでもらえるなら、これに人生をかけてみたいと思った瞬間です。

事業をやっていれば不条理なこともたくさんあります。でも遊びのプラットフォームとSaaSを同時に提供すれば喜んでくれる人が必ずいると思いました。それは事業者のサステナブルな働き方につながるし、地域を守ることにもつながると。

コロナ後は遊びの需要が急拡大する

インタビュアー

これがロジカルに整理しただけでは表現できない参入障壁なのでしょうね。この分野は思いがないとうまくいかないと思います。テクノロジーがあればうまくいくかというとそうでもない。アソビューの採用面での課題についてお聞かせください。

山野

プロダクトサイドの強化が急務です。SaaS事業は2年前と比較すると5倍くらいになっています。マーケットからの期待もあって売上も順調です。コロナが社会と折り合いがつくとリベンジ消費が起こり、需要は一気に拡大すると見込んでいます。まさに革命前夜の状況です。でも、それを支える事業者のトランスフォーメーションが追いついていません。

さらに、この業界はコロナ禍で痛んだのは事実で、まだまだ手放しで喜べる状況にはありません。アソビューの情報が欲しい人も限られているので、丁寧に事業者のヒアリングをしながら開発をしていく必要があります。

エンジニアも、プロジェクトマネージャーも、購買データを見られる人も、足りていません。今後は生体認証にもチャレンジしたいので、バックエンドからフロントエンドまで幅広くといったところでしょうか。

インタビュアー

最後に採用候補者へのメッセージをお願いします。

山野

休みの日に遊びに行かない人はいません。アソビューのサービスは、toCにもtoBにとってもインフラになりえるサービスだと自負しています。アソビューのミッションに共感し、そこに飛び込んでワクワクする人はどしどしエントリーください!

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