【ZVCキャピタリストの哲学】将来に役立つ問いで、未来の仕事を創る

【ZVCキャピタリストの哲学】将来に役立つ問いで、未来の仕事を創る

ZVCでは、様々なバックグラウンドを持つメンバーがベンチャーキャピタリストとしてスタートアップ企業への投資、バリューアップ活動を行なっています。今回は、フィンテック領域を中心に活動しているキャピタリストの湯田さんのこれまでの経歴や投資活動、バリューアップについて、プライベートの意外(?)な一面を交えてご紹介していきます。

インタビュアー
自己紹介をお願いします。

湯田(プロフィール
大学に通っていた時にインターネットの世界に衝撃を受けたことがきっかけでヤフーに新卒で入社をしました。その後ヤフーで6年間、財務部門等様々な職種を経験した後、グループの異動制度を使ってZ Venture Capitalに入社し、今に至ります。

インタビュアー
大学時代にどんな衝撃を受けたのですか?

湯田
2つあります。1つはアルバイトの経験です。大手教育系企業のWEBサイト制作のアルバイトで自らコードを書いたり、デザインをして何百万人が見るサイトの運営に携わる経験をしました。何もない状態からPC一台でものづくりをして、ボタンをポチッとするだけで何百万人に一瞬で公開できる体験は不思議で、衝撃的でした。もう1つはSNSの普及を体感できたことです。iPhoneの登場をきっかけにTwitterやFacebook、InstagramなどのSNSが急速に普及しました。多くの人が時間や場所を選ばず瞬時にインターネットにアクセスでき、不特定多数の人とリアルタイムなコミュニケーションを行えるようになりました。オンライン上でソーシャルグラフが広がってそこから新しい知識を得たり、出会いが生まれる体験は刺激的で、世の中を便利にするインターネットの可能性を強く感じました。

インタビュアー
それでヤフーに入社したんですね。その後どういった経緯でZVCに参画することになったのでしょうか。

湯田
財務部門で事業分析や予算策定などをしていた頃、M&A案件に携わったことがきっかけで、「より未来を創る仕事をしたい」と思いZ Venture Capital(旧YJキャピタル)に社内異動制度を利用しました。そこから現在のスタートアップ投資業務に携わるようになりました。

インタビュアー
湯田さんはZVCではフィンテックを担当されていますが、なぜフィンテックを選ばれたのですか?
 
湯田
ちょうど私が入社した頃から、Z Venture Capitalでは重要な領域に対して担当を決めて、それぞれが注力した活動を行うようになりました。重要な領域はメディア・コマース・フィンテックと定めて、「じゃあ誰がどこやる?」となった時に、みんななじみのあるメディア・コマースに手を挙げたんです。私は人と同じことをやっても面白くないなという思いと、自分にとって未知の領域の方が、やりがいがあるんじゃないかと思って、逆張りでフィンテックを選びました。

インタビュアー
ストイックですね(笑)

湯田
でしたね(笑)
 
インタビュアー
ところで、ストイックな湯田さんはどんな趣味をお持ちですか?

湯田
筋トレは長く続いていますね。6年ぐらい前から本格的にやっています。週2回ですけど。

インタビュアー
意外と少ないですね。

湯田
ハマっていた時は週5でジム、時には1日2回や深夜1時にジムに行くこともありました。プロテインを1日5杯飲んでいたこともありましたね。突き詰めた結果、果たして自分は何を目指しているのか?と思いまして。これは健康に良くはない状況だなと。まずは健康が大事だなということで、自分に合ったスタイルに軌道修正して今のやり方に至っています。ここに至るまでにはかなり試行錯誤がありました。

インタビュアー
ドはまりしちゃうタイプなんですね。
ここからは、Z Venture Capitalでの投資活動について伺いたいと思います。これまで10社ほど投資されてきました。最初は、どういう会社に投資されたのでしょうか。 

湯田
最初に投資した会社は株式会社ハローです。Autoreserveという飲食店の予約サービスでアナログな電話予約をデジタル化する便利なサービスを提供しています。。通常、飲食店に予約するのは飲食店サイトを見て、ネット予約できる場合は予約しますが、まだまだ電話予約しか受け付けていない店舗さんって多いですよね。その場合は電話をかけて予約をするんですが、Autoreserveの場合は、希望日時や人数を入力するとAI技術を使ってユーザーの代わりに自動音声がその内容を電話で伝えて予約をしてくれるようになっています。

インタビュアー
ハロー社とはどういうきっかけで出会ったのですか。

湯田
予期せぬ出会いでした。入社した時に堀さんから、「まずはキャラを作ろう」と言われまして。筋トレにハマっていたので、最初は筋トレに関するTweetを積極的にしていたんですよね。その日の筋トレメニューとか、海外の有名なボディビルダーについてつぶやいていました。そうしたらスタートアップ界隈やVCの中で筋トレ好きな人と徐々に相互フォローするようになっていきまして。今、代官山でTHE NUDEというジムを経営されているビックボさん(@bik__bo)とTwitterの筋トレ投稿を通じて知り合い、そのビックボさんから播口さんをご紹介いただきました。

インタビュアー
筋トレを通じて起業家と出会う。面白いですね。そこからどう投資につながっていったのでしょうか?播口さんという起業家は湯田さんの目にどう映ったのですか?

湯田
第一印象はとてもカジュアルな方だなと思いました。ヤフーのオフィスにサンダルで来られましたので。ところが、ミーティングがはじまるとその印象は一変しました。ものすごく飲食業界に詳しい方だな、と思いましたね。話すのが早い方で、5分も過ぎたら事業ピッチが終わっていました(笑)ただ、たった5分のピッチでも、飲食業界をあまり知らない自分もクリアに事業のことが理解できたので直感的にとても良いサービスだと思ったんですよね。ミーティングが終わってすぐ、オフィスで堀さんを捕まえて「すごい面白いサービスの会社に出会いました。一回会ってもらえませんか」って話しかけたのを覚えています。

インタビュアー
湯田さんはクールで落ち着いている印象がありますが、そんな一面も持っていらっしゃるのですね。

湯田
はい。自分の中ではそれぐらいAutoreserveというプロダクト構想と、播口さんという起業家が衝撃的でした。私が投資したいと思った理由は3つあります。1つ目は、播口さんが挑戦するに相応しい領域だと感じました。播口さんは世界中を色々旅されて、日本だけでなく世界中の有名な飲食店を食べ歩いていたんです。その経験から感じた飲食店と利用者のペインを解決するソリューションでした。
2つ目は技術です。電話予約をAIでやるという発想が素晴らしかったです。従来の飲食予約サービスはインターネット予約が普及していたのですが、電話予約が飲食予約市場のシェアをまだまだ独占していました。

最後は、このプロダクトが世界を狙えるグローバル・サービスになりうる、といった点です。ZVCでは日本からグローバルを狙えるプロダクト・起業家に投資をしたいのですが、この発想と技術を使えば必ず世界を獲りに行けると思いました。

インタビュアー
そこから投資に至るまでの道のりはどうでしたか?どれくらいの期間で投資をされたのですか?

湯田
大体1ヶ月ぐらいでしたね。とにかくスピード重視でした。自分にとって初めての投資委員会だったので、全力投球をしていた記憶があります。投資委員会資料がバージョン10まで行った気がします。

インタビュアー
初めての投資で緊張したことだと思います。でも気合が入っていたのでしょうね。2019年に投資をされて、間もなくコロナがやってきて、飲食業界は大変なコロナ禍に巻き込まれました。キャピタリストとしてハロー社をどのように支援されてきたのですか?

湯田
ご認識の通り投資してから1年で市場はガラっと変わり、。飲食店の予約をする人はいなくなってしまいました。代わりにフードデリバリーやテイクアウトといったサービスが急激に立ち上がりました。コロナ禍では飲食店スタッフとお客さんの接触を減らすテーブルオーダーや事前決済といったサービスが求められましたが、その都度ハローはサービスを多角化して荒波を乗り越えていました。
担当キャピタリストとして、会社のお役に立てたかはわかりませんが、とにかくスピードだけは意識しました。飲食業界が変わるというタイミングで、何よりスピードが大事だと思ったからです。
たとえば、播口さんから聞かれたことに対して、すぐに回答するようにしていましたね。他にも、類似サービスのニュースがあれば必ず共有していました。需要回復後、いかに他社に先んじてサービスを提供していくか、という点について自分として何ができるか、といつも考えていました。伴走させていただいて改めて感じたのは播口さんという起業家のスピード感です。予約事業が厳しい状況に陥っても、市場動向に合わせて次々とプロダクトをリリースしていきました。コロナ禍でアメリカではドライブスルーの注文を音声AIで対応するサービスが伸びていたりしていたので、日本でも市場機会がないか、など新規事業の話もたくさんしました。その時にさまざまな事業の可能性を模索できたことで、中長期で取り組むべき領域について整理を進めることができたと思っています。

インタビュアー
湯田さんが、キャピタリストとして常日頃から心がけている心構えや支援テーマにはどういったものがあるのでしょうか?

湯田
ZVCではコーチングをすごく重視しています。私自身、コーチングをコーチ・エィのコースで勉強をし、資格を取得しました。投資家として起業家が心の底から何をしたいのかという点、3〜5年後に向けてどういう姿を描いているかという点について、1on1で話をする際に問いを投げかけるようにしています。起業家は目の前のことに集中して、自分と向き合う時間が自然となくなります。私との1on1を通じて、今まで気づけなかったことに気づけたり、会社の方針を改めて考えるきっかけになったと言ってくださる起業家の方もいらっしゃいます。将来に役立つ問いを投げること、を常に意識しています。

インタビュアー
コーチングの資格まで持っていらっしゃるのですね。そんな湯田さんは、今後どのような起業家・スタートアップに投資していきたいとお考えですか?

湯田
プロダクトにこだわってユーザーファーストなモノづくりができる起業家やチームに投資をしていきたいです。自分自身、大学時代にインターネットでモノづくりをする楽しさを感じたことと、ユーザーとして味わった感動は今でも忘れられません。今は投資という仕事をしているので、投資先の企業のプロダクトを通してユーザーが感動するような体験を与えていきたいという思いがあります。
特に私が注目している金融領域は特性上、新しいテクノロジーの浸透が最も遅い業界の一つです。規制や業界慣習も根強いため、ユーザー体験という意味ではまだまだ改善の余地があると考えています。良い意味で既存の枠組みに囚われず新しい発想でプロダクトを作る起業家の方と、体験を変えるプロダクト作りに一緒にチャレンジをしていきたいですね。