毎月2万人が利用するメンタルウェルネス~急成長メンタルケアの事業のこだわり~
*100人に約6人が生涯のうちに経験しているといわれる「うつ病」。実は辛い体験や悲しい出来事だけでなく、結婚、進学、就職など嬉しい出来事の後にも発症することがあります。
悩みを持っても、病院やカウンセリングに行くことにハードルがある。そうした方にベッドの上や移動中、場所を問わず簡単に利用できるメンタルウェルネスサポートがあるのはご存じですか?それが「Unlace」です。
毎月2万人が診断している1分間の不安度チェックや、カウンセラーに対して顔出し不要で24時間365日いつでも連絡できるサービスを提供しています。
今回の対談では、Unlaceの前田さんに立ち上げのきっかけや今後の展開、それに求める人物像についてお話を伺いました。見た目と中身のギャップが大きい前田さんの人柄にも注目です。
【対談】
前田 康太 代表取締役社長
広島出身。Pairsを運営するエウレカで事業開発や事業責任者を務め、2020年1月に独立し、自分自身が鬱になったことをきっかけにUnlaceを創業。専門はマーケティングとプロダクトマネジメント。
内丸 拓 インベストメントマネジャー
京都大学工学部、同大学院情報学研究科修了後、General Electric(GE)を経て、経営共創基盤(IGPI)に参画。GEではヘルスケア/ エネルギー/ オイル&ガスの事業部門において経営企画・管理業務に携わり、IGPIではスタートアップから大企業までの幅広いフェーズの企業に対して事業成長/ 新規事業創出/ 事業再生の支援に従事。2022年5月よりZ Venture Capitalに参画。
『Unlaceの始まりは自身の鬱』
内丸)前田さん。今日はよろしくお願いします。今回、いろいろと聞きたいことがあります。まず、なぜUnlaceを立ち上げようと思ったのかきっかけを教えてください。
前田)率直に僕自身が鬱になったことですね。
内丸)鬱ですか?
前田)はい。少しだけ僕自身の話をすると、僕は一卵性の双子で、双子の兄を意識して振る舞いを制限するような育ち方をしてきました。だから双子の兄と僕がそれぞれ自立してから「自分が自分らしくある」ことに興味を持つようになりました。ただ誰かを意識した振る舞いを簡単にやめることはできず、社会人となり、前職のエウレカ時代はさらに誰かを意識する自分の人格が強くなりました。前職はスタートアップかつ外資にM&Aした企業ということもあり、結果に対してシビアでした。一方で、ありがたいことにそこで評価をしてもらって、ポストを任せてもらったのですが、自分が評価してもらったのは能力ではなく、結果に対してのコミットメントが強い部分だと思っていました。
内丸)プレッシャーを感じる環境ですね。
前田)だからこそ誰よりも努力をしなければいけないと思い続け、若い年齢の自分が舐められないようにするという考えが常に頭の中にありました。弱い姿を見せることなんてできず、すごい人、ストイックな人を演じようとする辛さがあり、自分を苦しめる完璧主義が出来上がっていきました。それが起業後に鬱になった自分を作ったのかなと思っています。
内丸)その後、どうなりましたか。
前田)苦しいと思いつつも、最初の数か月は病院にも行けませんでした。寝られない自分を認めたくない、病院に行くと病名がついてしまい弱者のレッテルが貼られてしまうんじゃないかと思って、病院に行かない理由をいつも探していました。現実逃避するため、ひたすら漫画を読んだり、TikTokを毎日見て、お酒を飲んで、という日々を過ごしたこともあります。でも、それじゃあ良くならないですよね(笑)。日に日に自分が暗くなっていく。これじゃあだめだと重い腰をあげてようやく病院に行ったのですが、そこでの経験がまたなんとも微妙でした。
内丸)その話、すごく気になります。
前田)病院では、「薬だしておくね」で、はい、終わり。話を聞いてもらえるのかと思いきや5分で診察は終わりました。確かに睡眠薬で眠れるようになりましたが、そもそも鬱になった自分自身の生活に対する根本的な解決になっていないように思いました。なので、そのあとカウンセリングも受けました。これもまた微妙でした。
内丸)え…
前田)病院で受けたので、たくさんのカウンセラーをかかえているわけじゃないんですよね。病院に所属しているカウンセラーは1名しかおらず、その方に相談してすぐに「この人、僕の気持ち絶対分かっていないな(笑)」となりました。自分の悩みをわかってくれる人はこの人ではないな。この人の人生経験的に自分の経験を理解できるはずがないと思いました。
内丸)聞いているだけで辛いです。そうした経験があるなかで、どうやって立ち直ったのでしょうか。
前田)たくさんカウンセラーに会い、そこで良いカウンセラーを見つけて立ち直りました。元々、起業して最初に出したプロダクトが新型コロナの影響と、自身の鬱が原因でピボットしてしまいました。それでも起業し、成功させたいと思ったのは、自分みたいな人を救うためが大きいです。なんですかね。僕自身、結構、生きづらさを感じる部分があって。嫌な人と一緒にいると、自分の人間関係を最適化できないのかなというのは、わりと考えていていました。苦しんでいる人を解決できればいいなと。
『良いコミュニケーションを定義することはできない』
- カウンセラーは心理資格保持者のみ
- 病院と違い、事前の予約・来店不要
- AIによるカウンセリング内容の解析が自己理解を促進
内丸)人のために立ちたい、という思いがいまのUnlaceの土台になっているんですね。サービスのなかでこだわっていることはありますか?
前田)サービスの土台にもなる面白い話があって、良いコミュニケーションの定義はすごく難しいんです。これについて僕たちもすごく考え、メンバーと話し合いました。そしてたどり着いた答えは、結局、「良いコミュニケーションを定義することはできない」ということです。
内丸)確かに、良いコミュニケーションって何?と思います。
前田)でも、反対に悪いコミュニケーションは定義しやすいんですね。なので、僕たちはひたすら悪いコミュニケーションをなくして、そこに対してプロダクトをつくっていきました。
内丸)なるほど。プロダクトについてですが、Unlaceのサービスはテキストが中心となっていますよね。カウンセリングは対面でということがこれまでの認識だったんですが、あえてテキストが良いと考えている理由はなんですか?
前田)自分自身に置き換えてみると、辛いときは病院に行くことさえ面倒でした。またリモートでの診察も、身だしなみを整えたり、髪型を整えたり、そんなことが嫌だったんですよね。簡単にできるのは何かというというのが最初の発想です。やっぱり新しく可処分時間をつくらないといけないコミュニケーションはネックだと思っています。
内丸)何か新しい時間をつくってまで、ということは避ける人が多いように感じますね。
前田)あと例えば、面談だと50分の間話をして、それで次2週間後に来てくださいと言われたとします。その場合、何かストレッサーにあたったとしても、2週間後まで対応できないですよね。でも僕らはチャットやテキストなので、その都度対応できるメリットがある。内容が残っているので見返しやすいですね。
内丸)アプリを使ってカウンセリングを受ける。この時、料金の妥当性も気になります。そこの壁はどう乗り越えようとしていますか?
前田)はい。まずここに関して言うと、都内でカウンセリングを受けると1時間で大体1万円ほどかかります。一方で、Unlaceは、2週間で8800円という料金です。ここの金額がさほど変わらないというところで、相対的な物差しで考えているところです。とはいえ、けっして金額は安くないと思っています。大事なのは、金額よりも相談して本当に解決してくれるのか、という課題が大きいです。
内丸)実際にどんな相談が多いですか。
前田)相談内容として最も多いのが「漠然とした悩み」なんですよ。何故か分からないけれど、最近ストレスを感じている。寝れない。そうすると金額のギャップと言うよりも、相談できるフォーマットに持っていってあげることの方が重要だと思っています。仕事をしていて上司からもっとなんで早く相談しなかったのか、と言われることはよくあると思います。でもこれって相談したくなかったわけではなくて、なんて切り出していいのかわからなかったとか、あたりがつけられなかったとか、と言うことだと思っています。
内丸)よくわかります。
前田)メンタルヘルスのカウンセリングに関しても、共通していることで、悩みに対して当たりをつけさせてあげるとか、自分はこういうことに悩んでいるなということへの自己理解を促進してあげることが、まず自分と向き合う最初の一歩だと考えています。
「新しいサービスとは?」
内丸)前田さん。いまUnlaceでは新しいサービスに取り組んでいる、と聞いたのですが。
前田)僕たちはベッドの上でも移動中でも簡単に利用できるすべての人へのメンタルウェルネスの提供を目指しています。その上で先日に完全に無料で利用できるメディテーション機能をリリースしました。
内丸)どういったものですか?
前田)心地よい音とともに、静かに瞑想できるナレーションが流れてきます。これも使う方のニーズによって、複数のパターンを用意しています。これまでメンタルヘルス・ウェルネス自体がやはりサービスとして馴染みがあるものがないというのが日本だと思っていますし、何かがあったら使うサービスだし、特定の人が使うサービスだと思われているような世の中の空気はあると思っています。だからこそどんな状況でも簡単に使える、カジュアルに使える機能とかは増やしていきたいと考えています。
内丸)これまでの利用者の広がりはどうですか?
前田)Unlaceの心理診断は、毎月2万人が利用しています。結果のSNSへのシェアはあまり多くはありませんが、シェア用のURLのコピーはかなり多いです。またそこからの流入もかなり増えています。
内丸)毎月2万人はすごいですね。
前田)このことからもクローズドな場での会話には繋がっていると判断しています。そしてこれが実はメンタルウェルネス・メンタルヘルスについて誰かと会話したいというニーズの潜在的な部分だと考えています。こういった背景からも、カンバセーション(語られ方)を変えていくことに取り組もうと考えています。いまの日本だとメンタルウェルネスケア・メンタルヘルスケアはできることなら誰も使いたくないものですよね。
でもそれを使ってもいいもの。それについて会話ができるように実現していくことが僕らの取り組んでいることです。ただその場合には簡単というだけの便益では弱いと思っていて、簡単を超えて楽しいと思われるくらいのサービスにしていきたいと思っています。何をやるかは決まっているんですが、ここはちょっとこの記事を読む人には秘密にしたいです(笑)
「Unlaceの求める人材」
内丸)最後にUnlaceの組織の話を聞いていきます。いまどういった人材を求めていますか?
前田)変な話、僕、率直にワーキングタイムを短くしたくて(笑)
内丸)短く?
前田)その分、事業について考える時間を長くしたいタイプと働きたいと思います。残業をしてほしいとか全く思っていなくて、むしろマジでやめてほしいと思っています。会社で仕事をしている時間、自分が仕事に向き合っている時間と言うよりも、土日に「これUnlaceだとこういうことできそうだよね」と、自然と考えることが好きな人と仕事をしたいですね。そのためにも仕事を終えて、早く帰ってゆっくりしたり、新しいことへのアンテナを張ったりとか、そういう人がいいと思ってます。
内丸)勉強になります…(笑)
前田)そもそもコーポレートカルチャーとして課題志向、徹底的に顧客の課題を考える点になってほしいと思っていて、それが良い仕事だと考えています。僕らの提供している、メンタルヘルス・ウェルネスと言うのはほとんどが潜在層、自分の課題をわかっていない人が多いカテゴリーです。顕在化された課題だと解決はわかりやすいんですけれども。潜在的な課題なのでなぜこの人の課題はこうなんだろうなとか、この人たちこれ何をしているんだろうとか、考える人のほうが向いているかなと思いますね。
内丸)いまUnlaceに入ると、どんな景色が見えると思いますか。
前田)景色...きっと良い景色だと思います(笑)
これから日本の当たり前を変えるという言葉はチープですけど、社会性とスケールが両立するのはかなり稀有だと思っていて、それが両方できると言う意味では、すごく面白いことができると思います。あとは、組織設計とか何においてもプロダクトマネジメント脳なので、組織のメンバーすら、1つのプロダクトの機能だと思っています。なので、どう働けばいいのかということは、わりと「こういうことをすると、この指標あがりそうだよね」とか。結構組織についても考えてやったりしますね。
自分たちが世の中を変えるときは、変えられる側は変化にすぐに気付けないので、変化させる側として、変化を感じることができるとは確信しています。また、ユーザーさんからのレビューもコメントも励みになります。誰かの人生をかえる仕事なんだなと実感もあって、自分の人生ドロップアウトしたけど持ち直しましたとか、前よりすごしやすくなりましたとか、心のそこから感謝されることもあります。それがとても印象的ですね。
内丸)ありがとうございました!