【前編】誰もが「世界に一つの価値」を/Kyuzan創業者が語るNFT・ブロックチェーンのおもしろさ

【前編】誰もが「世界に一つの価値」を/Kyuzan創業者が語るNFT・ブロックチェーンのおもしろさ

今回は「NFT」の世界を紹介します。
NFT(Non-Fungible Token)とは、簡単に言うと「改ざんできない証明書付きのデジタルデータ」のこと。ただ、このように表現してもイメージすることは難しいですよね。
 
では、例えば「あなた好みの、世界に一つだけのデジタルデータ」があれば欲しいと思いませんか?それを可能にするのがNFTです。

2021年。この年はNFTの可能性に世界が反応し、爆発的な成長を遂げた年となりました。その一つが「デジタルアート」。手書きではなく、デジタルで描かれたアートのことです。*¹アメリカのアーティストが制作したデジタルアートが、去年、約75億円(!)で落札されたことでも話題になりました。
 
世界的に盛り上がりを見せるNFT。「これをビジネスに活用すればもっとおもしろくなる」。
そう話すのは、NFTとブロックチェーンを活用したサービス・技術基盤を提供する株式会社Kyuzan(以下、Kyuzan)の代表取締役・髙橋 卓巳さんです。
 
Z Venture Capitalも注目するNFT・ブロックチェーン領域のおもしろさに迫りました。

髙橋 卓巳(たかはし・たくみ)
ブロックチェーンスタートアップKyuzanを2018年に創業。創業前から個人でブロックチェーン開発にフリーランスで携わる。大学ではプライバシー保護データマイニングと完全準同型暗号を用いた秘匿計算のビッグデータ分析への応用に関する研究に従事。東京大学大学院修士卒。

湯田 将紀(ゆだ・まさき)
早稲田大学社会科学部卒業後、ヤフー株式会社に入社。検索連動型広告やディスプレイ広告の企画開発を経験後、全社のマーケティングを推進するラボ的組織にてマーケティングの最適化支援やアドテクを活用した先進事例の創出を行う。その後、メディアカンパニーの財務企画として財務分析や事業計画策定、財務オペレーションの構築などに従事し、 2018年10月よりZ Venture Capitalに参画。
 

Kyuzanはブランド独自の世界観を表現できるオリジナルの NFTプラットフォーム「Mint」を開発。Perfume初のNFTアートも支援。

湯田
Kyuzanは、NFT・ブロックチェーンを誰もが使えるツールとプラットフォームの開発。そしてビジネスに活用する事業者の支援もされています。日本ではまだ数少ない存在だと思いますが、そもそも髙橋さんがNFT・ブロックチェーンに興味を持ったのは何がきっかけだったのでしょう?
 
髙橋
興味を持ったきっかけは、友達がFacebookで「ビットコインを買ったので送金してみたい。ウォレットを持っている人がいたら教えて」という投稿をしていたのを見たことです。それまでもビットコインという単語は見聞きしていたものの、興味を持つことはありませんでした。でも、友達がやっているなら調べてみようかなと思ったんです。
 
湯田
Facebookの投稿で?そのとき、どこにビットコインのおもしろみを感じましたか?
 
髙橋
高校時代から知っている友達の投稿だったことが大きかったです。調べてみたら、ビットコインの仕組みそのものはすごくシンプル。なのにちゃんと動いていることに興味を持ちました。「satoshi nakamoto」の短い論文を読んで、ビットコインが開発された原理もすごいと思ったけれど、匿名であるといった背景もおもしろいと思いましたね。
 
そこで、まずはビットコインを動かしてみようと思い、取引情報のチェックから始めました。そして日本の会社で関わっているところはないのかなと探すと、仮想通貨のカンファレンスを見つけました。当時、ビットコインは投機商品として売買されているだけでしたが、金融やエンジニアなどビジネスとして参入するプレイヤーが少しずつ増え始めたのを見て、「これはおもしろくなりそうな市場だ」と思いましたね。
 

ブロックチェーンの世界観に魅せられた

 
湯田
より具体的に、NFT・ブロックチェーンのどこに可能性を感じましたか?
 
髙橋
ビットコインについて調べてみると、実社会の基軸通貨になるかもしれないという説がありました。それを丸っきり信じたわけではありませんが、法定通貨に代わる可能性を秘めた仮想通貨の市場は、よりスケールが大きくなるのではないかと思いました。
NFTが登場したのは2017年の年末でしたが、いろんなクリエイターやコンテンツが出てきました。しばらくするとユーザーがNFTを所有するための課題も見えてきて、これは動きそうだなと。市場を大きくしていくには、最初の人をどれだけ巻き込むかが重要です。人を巻き込むだけの魅力はあるし、そこに作る側として参加したいと思いました。
 
湯田
それで起業することになったんですね。
 
髙橋
そうですね。学生時代からいろんなスタートアップに関わらせてもらっていて、エンジニアとしてブロックチェーンにも触れていました。いろんなものを見るうちに自分でも何かしたいと思うようになったのですが、同時に「起業のための起業」はダメだとも思っていました。
また、NFTが出てきて起業を考えたとき、資金調達は難しいと思いました。領域はおもしろいけれど、確立された市場ではないからです。資金調達する上でスタートアップはベストな選択なのか。スタートアップでやる意味や、VCから見たときに説明可能なものは何かをあれこれ考えて、なかなか踏み切れずにいた時期もありました。

“やればわかる” NFTのおもしろさ


湯田
そうした時期を踏まえ、2018年の創業当初のねらいといまの状況を比較するとどうですか?
 
髙橋
大枠は想定の範囲内です。創業時から僕たちが語っているおもしろさを、ほとんどの人が聞いていませんでしたが、「こんなに予想が当たるんだ」という感じですね。
でも、1回目のブームが来たのは思ったより早かったです。率直に、NFTはまだ人々の日常になっている段階ではありません。一般の人が日常的に使えるサービスやコンテンツはまだ出ていない。ここが重要ですが、NFTやブロックチェーンが日常になるには、体験が必要です。では、人々が体験したいものは何か。それは「エンタメでありゲームだ」というのが僕の答えです。
そのため、NFTゲームの大きな市場がない段階で、ここまでニーズが大きくなったことは意外でした。NFT・ブロックチェーンはまだまだできないことが多いので、何か1つができるようになると、そこから一気に花開く世界だと思っています。
 
後編はこちら

AFPBB News(2021年3月12日)より
https://www.afpbb.com/articles/-/3336285