
Carpenstreetへの投資
by Julie (Jeemin) Seo
韓国コンテンツ振興院(KOCCA)の発表によると、2021年の世界のコミック市場は約16.3兆ウォンの規模に達しています。その中でも日本が約6.2兆ウォンで全体の38%を占めており、世界最大の市場となっています。続いてアメリカが2.9兆ウォン(18%)、韓国が2.1兆ウォン(13%)、フランスが1.3兆ウォン(8%)となっています。
コミックは、エンタメ業界全体やその関連産業にとって、非常に価値のある「知的財産(IP)」の原点とされてきました。特に日本とアメリカは、世界的に有名なIPを数多く生み出しており、「グローバルIPの宝庫」とも言われています。たとえば2021年8月時点では、年間売上ランキングのトップ10に入ったIPのうち、7つがポケモン、ハローキティ(サンリオ)、マーベルなど、日本やアメリカ発の作品でした。
また、日本では多くのアニメ作品が漫画を原作にしているように、韓国でも同じ流れが進んでいます。2024年時点で、80件以上のウェブトゥーン作品がドラマや映画として展開されるなど、「ワンソース・マルチユース(OSMU)」の成功例が増えています。
韓国で2000年に生まれた「ウェブトゥーン」は、スマートフォンで縦にスクロールしながら手軽に読めるマンガとして登場し、今では世界中に広がる成功モデルとなっています。日本でも、世界最大のコミック市場として知られる中、2010年代からウェブトゥーンの人気が高まり、LINEマンガなどのアプリを通じて多くの人が楽しむようになりました。
Sensor Towerによると、2025年の第1四半期には、LINEマンガが日本のアプリの中で最も多くの収益を上げたと報告されおり、また、共同通信によれば、2024年にはウェブトゥーンが日本のコミック市場の約73%を占めるまでに成長したとされています。
こうした中、今回、ZVCが出資するCarpenstreetが2019年にスタートした「ACON(エイコン)」は、建築家やゲーマーなど、さまざまな分野のクリエイターが使わなくなった3Dアセットを売買できる、デジタルアセットのマーケットプレイスとして、サービス開始から短期間で韓国市場に広がっています。2022年時点では韓国の専業ウェブトゥーン作家の約55%(見込み作家を含めると約5%)がACONを利用しているなど、業界に欠かせない存在になっています。
さらに2024年には、新たに背景制作専用ツール『ABLUR(アブラー)』をリリースし、ACONで購入した3Dアセットを使って、背景カットを効率的に編集・再生成できるこのツールにより、従来2〜3時間かかっていた制作時間を、わずか数分に短縮できるようになりました。
ACONのアセットライブラリは、当初のマンガ向けに加え、ゲーム向けの素材も拡充していて、現在では、マンガ・ウェブトゥーン業界にとどまらず、VTuberやゲーム業界など幅広い分野に活用が広がっています。
ZVCでは、Carpenstreetの海外市場での高い可能性、そして専門性と人脈を兼ね備えた創業者のリーダーシップのもと、Carpenstreetが「次世代のAdobe」となると確信しています:
・ローカライズ対応(カスタマーサポートやマーケティング、アセット/製品の現地最適化など)を行っていない現状でも、ACONは、流通総額(GMV)は堅調な成長を見せています。すでに、LINEマンガや日本の主要出版社に所属する著名な作家がACONプラットフォームへの登録・活用を行っていて、2024年にリリースした背景制作ツール『ABLUR(アブラー)』に対しても高い関心を示しています。これらの事実は、Carpenstreetのサービスが海外市場、特に日本においても強い市場性と成長ポテンシャルを備えていることを明確に示すものです。
・Carpenstreetの創業者兼CEOであるMinhong Lee氏はマンガ愛好家であり、韓国最大のライフスタイルテックスタートアップ『Ohouse』を運営する『Bucketplace』の初期メンバーとして活躍した経験を持つシリアルアントレプレナー兼プロダクトマネージャーです。彼のリーダーシップのもと、同社はウェブトゥーン産業(作家だけではなく、スタジオやAIスタートアップなども含む)にとって使いやすいワークフロー効率化ツールとしての地位を築きつつあり、AI導入の是非を巡る議論など急速に変化する業界環境にも柔軟に対応していけると期待しています。

記事内の引用・注釈
* KOCCA (Korea Creative Content Agency)
* Sensor Tower
* Kyodo News
* ACON
* ABLUR