ジールスCEO 清水さんインタビュー(前編)
本日インタビューするのは、株式会社Zeals(ジールス)代表取締役CEOの清水正大さん。ジールスは“おもてなし革命“を掲げ、チャットボット技術を強みに「チャットコマース」と「接客DX」を展開しています。4/1にZ Venture Capitalからジールスへの出資の発表を行いました。
ZVCから担当キャピタリストである取締役COOの都 虎吉との対談記事をお届けします。
CVR8.7%!驚異的な実績のプロダクト「チャットコマース」
都:改めて、資金調達おめでとうございます。総額18億というのはかなりの調達額ですよね。
清水さんから「チャットコマース」の話を伺ったとき、ファーストインプレッションで未来を感じたのを今でも覚えています。チャットで会話することでモノやサービスの購入・予約ができて、わからなかった時にはビデオなど他のツールに繋がる、といったSF映画のような世界観を実現していますよね。
アグレッシブに挑戦する姿勢と購買体験の「未来」が感じられたので、お会いした日から「絶対にご一緒したい!」という意気込みで投資検討を始めました。
ではまず、紹介がてらジールスのビジネス、プロダクトを改めて教えてください。
清水:心強いお言葉、ありがとうございます!
ジールスは現在2つの事業を展開しています。一つが「チャットコマース」というチャットボットを通して会話しながら買い物と決済までが可能なサービスを企業様向けに提供しています。
チャットボットというとカスタマーサクセスをイメージする方が多く、お問い合わせ対応などに使われるのが一般的ですが私たちは、チャットボットをコマース・マーケティングに活用するというコンセプトを業界に先駆けて打ち出しました。
主にLINEのインターフェイスを通じて、ユーザーは企業やサービスのチャットボットと対話しながら商品購入やサービス予約ができるのですが、CVRが高いのが特徴です。平均CVRだと8.7%という驚異的な実績が出せています。
例えば、商品を購買するか悩んでいるユーザーがいた場合、チャットボットを通して悩みや疑問を解消したうえで気持ちよく商品を買ってもらう、そんなヒアリングファーストな接客体験を提供しています。
都:一般的なディスプレイ広告のCVRと比較すると、8.7%は驚異的な実績ですね。「チャットコマース」で扱う商品に向き不向きはあるんですか?
清水:個人のライフスタイルに適したサービスや情報の非対称性があるものは相性がいいです。
例えば、化粧品なら「自分に合うだろうか」「自分の肌に馴染むだろうか」といった悩みもチャットで相談できるので、様々なニーズに応えることができます。
フィットネスや学習塾など来店や体験を伴うもの、通信や金融など「仕組み自体がわからない」「費用感はどのくらいなのか?」など多くの情報から自分に適しているか判断が難しい商品・サービスも相性がいいです。
LPの中で一から十まで説明するのは難しいことが現状で、チャットボットに分からない点を聞いて一つ一つクリアにする方がユーザーにとって分かりやすいですよね。
逆に、衝動買いをするものには向いていません。
例えば、エンタメ系アプリなど、直感的に「面白そう」と感じてコンバージョンしたり、購買に思考が入らないものは既存の購買体験でユーザーは十分満足していると思います。
都:ユーザーへの提供体験を改善することで、クライアントに価値を提供しているということですね。
グローバルのデータにはなりますが、8割程度の人がチャットで物を買ってもいいと思っている、というデータがありました。
チャットの接客を通した購買はユーザーフレンドリーだと思いますし、一瞬でも買い物中に悩むタイミングがある商材なら、様々な業種で導入余地がありますね。
コロナで注目された「接客DX」という新たなソリューション
都:コロナもあってオンラインでモノを買う機会が以前より増えましたよね。これまで、店舗で接客を行っていた業種では企業とユーザー間で情報の非対称性が生まれたり、そもそもの企業活動が難しくなったのではないかと思います。
そこにはどういう課題があって、ジールスはどのように解決したんですか?
清水:コロナ禍で、旅行業や小売業など接客を伴うビジネスを行っているお客様は対面での接客ができない状況に陥りました。その時、思ったんです。日本が世界に誇る「おもてなしの文化」をなんとしても守りたいと。働いている皆さんが、店舗での接客ができない状況下でも活躍できる環境をつくりたいと。
対面接客ができなくなったことで、ビデオを使った接客に舵を切る企業様も多かったのですが、最初からビデオ接客を利用するのはユーザーにとってハードルが高い気がしました。
そこで、ジールスはビデオ接客に至るまでのプロセスに目を向けたんです。
そうして生まれたのが、2つ目の事業である「接客DX」になります。
「接客DX」は、機械(AI)と人による統合ソリューションです。簡単にいうと、「チャットボット」を単一のツールとしてではなく、接客プロセスの中に組み込んだ一気通貫型の仕組みですね。ユーザーは、「チャットボット」から「有人チャット」や「ビデオ接客」など興味関心に応じたコミュニケーション方法を選び、好きな場所やタイミングでアクセスすることができます。
昨年10月に旅行大手のHIS様との取り組みを発表した後、自動車、美容、金融、不動産などさまざまな業界から問い合わせをいただきました。今年2月には、自動車業界で初めて「接客DX」に挑戦する発表もしました。今後も、さまざまな業界と新たな顧客体験を共に創造していきたいです。
都:いろんな購買行動がオンラインにシフトしており、Amazonや楽天、STORES、BASEなどECサイトでの買い物が増えていますが、ジールスは対面接客で商売をしている業界のデジタル化をサポートしたんですね。
清水:コロナで、購買行動がオンラインにシフトした中でも、日本のEC化率はまだ10%越えていませんし、すべてのユーザーにオンライン化が受け入れられているわけではありません。それでも、非対面・非接触が求められる時代にオンライン化は避けては通れない道だと思っています。
買い物においてコミュニケーションは非常に重要な要素です。対面の場合、接客員が丁寧な説明やアドバイスをしてくれます。しかし、オンライン化が進み、webサイト上に載っている情報を見ただけで判断してくださいというのはユーザーにとって非常に難解です。ユーザーフレンドリーなチャットボットを使ってみるという購買体験は、今後も様々な領域に広がっていくと思います。私たちもその体験にテクノロジーを活用しながら「感動や温かみ」を再現していきます。
都:まさに、日本の接客のオンライン化を推進していく存在ということですね。
LINEを活用したユーザーとの継続的なコミュニケーションは重要
都:事業の説明、ありがとうございました。まさしく、「購買行動のオンライン化にチャットボットあり」と感じたのですが、オンライン化の文脈以外で、クライアントの課題として挙がるものはありますか?
清水:大きく二つあります。オンライン上で、「1on1コミュニケーションが成立しないこと」と「継続的なコミュニケーションが難しいこと」が挙げられます。通常の広告運用では、大多数に向けた一方的な訴求となり、ワンタイムでの接点しか構築することができません。例え商品やサービスを購入いただいたとしても、アフターフォローまで行うことができないという課題があるんですよね。
例えば、メンズスキンケアブランドでは、男性のスキンケア自体があまり根付いていないので、その文化を認知啓蒙していくことが重要です。
「チャットコマース」は、LINEの中で1on1のコミュニケーションが成立するので、男性のスキンケアの重要性を情報として提供したり、肌の悩みを聞いたりとユーザーに寄り添った継続的なコミュニケーションが可能となります。
LINEの公式アカウントをうまく使っていきたいが、プッシュ通知の送信に留まりうまく活用できていないというクライアント様も多くいらっしゃいます。ジールスは、「チャットボット」だけを提供するのではなく、コミュニケーションデザイナーという社内の運⽤チームがクライアント様のビジネスや商材において会話を設計するところからお手伝いしています。現在、エンドユーザーは延べ430万人、会話分析データ数は4.5億に及び、資産化したデータを活用しながら、お客様のマーケティング戦略に貢献させていただいています。(2021年3月時点)
都:まさに、クライアントにとって顧客目線を大事にするCRMを実現していますね。リタゲ広告とは違って、継続的なコミュニケーションが実現できることや自社のファンを管理できる点もいいですね。
清水:はい。LINEのインターフェイスが優れているのは、ユーザーがどのタイミングで悩んでいるかデータ収集できる点にあります。また、どのタイミングでプッシュ通知を送ると購買につながったかも分かるので最適なコミュニケーションを設計できます。
そのため、継続利用につながりやすくLTV向上や、ユーザーのエンゲージメントを高めリピーターやファンを増やすことができます。
都:LINEのIRにも書いてありましたが、公式チャンネルを開設する企業はどんどん増えていますよね。中国でもチャットで購買行動が起こっていたり、楽天でも同様にチャットをストア内に導入するケースが増えていたりと、大きなトレンドになっていますね。
清水:中国のタオバオでも、ほぼ全てのストアに「チャットボット」が導入されており、各ストアの「チャットボット」を立ち上げて、会話をする中で商品購入まで完結できるケースもあります。中国はEC化率が高いと言われていますが、それだけ顧客体験に価値があるという意味を含んでいるように思います。日本でも、余地はまだまだありますよね。
都:清水さんは、「チャットボット」をコマースマーケティングに普及させていくことで、購買のオンライン化を市場の最先端で切り拓いていっていますね。
後半では、ジールスの今後のチャレンジや組織についてお話ししていきたいと思います。