AB180への投資

by Josh Jung

Z Venture Capital(以下、ZVC)は、韓国発のアドテック企業、AB180のシリーズCラウンドに出資しました。AB180は、グローバルなモバイル計測を行う「Airbridge」と、AIを活用した広告・アプリ内の収益最適化エンジン「Airflux」を展開しています。

AB180が展開するプロダクトは、双方に補完できる関係性を持っています。Airbridgeは、「広告の効果を正確に測る」ためのツールです。アプリに組み込んだ計測の仕組みを通じてユーザーがアプリ内でどう行動したかを把握するとともに、GoogleやMetaといった主要広告プラットフォームとの公式提携により、広告が何回表示され、何回クリックされ、いくらかかったかというデータを各チャネルから直接取得します。「ユーザーがどの広告に接触し、その後アプリ内で何をしたか」という一連の流れを可視化し、「どの広告が本当に成果につながったのか」を市場で最も正確に特定できます。

またAirfluxは、そのデータを使って「実際に収益を伸ばす」ためのツールです。ユーザーのタイプごとに、広告を出すタイミングや回数、動画広告視聴の見返りとしてユーザーに与える報酬の内容をAIが自動で調整し、一人のユーザーがもたらす長期的な収益を最大化します。つまり、一方がマーケティングの「真実」を明らかにし、もう一方がその真実を収益へと変えるという関係にあります。


投資の理由


リセラーから自社製品の企業への転換、そして国内市場でのリーダーへ。 AB180の収益は、長らく再販事業に依存していました。しかし、その構造は根本から変わっています。現在は自社の計測プロダクトとAI広告プロダクトが事業を牽引し、Airbridgeの自社プロダクトによるARRは従来の再販事業を上回りました。これは売上構成が少し変わったという話ではなく、会社そのものが生まれ変わったということを意味します。

成長のもとが自社製品にあるからこそ、事業を大きく伸ばしやすく、競合との差別化を図ることができています。この転換を経て、Airbridgeは広告効果の計測サービスとして韓国でトップの地位を確立し、その勢いは続いています。顧客満足度が高く、初期契約が何倍にも拡大する「ランド・アンド・エクスパンド」の事例も繰り返し確認できました。

時間とともに強まる参入への壁。 この市場での本当の参入障壁は「アクセス」です。大手の広告プラットフォームは、広告の詳細データへのアクセスを、招待した相手にしか認めていません。こうした中で、Airbridgeは、Google、Meta、TikTokをはじめとする最大手プラットフォームの公式パートナーステータスを保有しています。このマルチプラットフォームでの地位を獲得している企業は、世界でもごく一握りです。この資格を得るには、「実績がなければ認められない、認められなければ実績が作れない」という壁を、プラットフォームごとに何年もかけて一つずつ乗り越える必要があり、資金力のある新規参入企業でも、お金では解決できません。しかも、この強みは時間がたつほど大きくなります。顧客と広告チャネルが増えるほどデータが蓄積され、データが増えるほど製品が良くなり、それがまた次の顧客を呼ぶ。この好循環こそが、市場の先頭を走る企業としての大きな強みになっています。

韓国のSaaS企業として稀有なプロファイル——持続可能性と成長の両立。 韓国のソフトウェア企業で、成長を続けながら経営の健全さも保てている会社は多くありません。かつて注目を集めた企業の多くが、そのどちらかでつまずいてきました。AB180は、売上の着実な伸びに加えて、成長期の企業に欠けがちな2つのもの、つまり資金繰りの健全さと、黒字化への現実的な道筋を備えており、顧客1社あたりの採算も改善を続けています。

加速するAIプロダクトのパイプライン。 Airbridgeは、単なる計測・分析ツールから、AIが中心となって動くマーケティング基盤へと進化しつつあり、自社に蓄積されたデータの上に、AIが自分で考えて動く機能を作り込んでいます。次世代のAI「Airbridge GO」はすでに開発・テストの段階にあり、データの分析や戦略づくりから、広告キャンペーンの実行・改善まで、マーケティングの一連の仕事を人の手を借りずに、こなせるよう設計されています。並行して、Airfluxも、広告の出し方の調整にとどまらず、アプリの収益全体を引き上げるAIエンジンへと進化を続けています。これらは計画上の構想ではなく、実際に出てきている製品であり、開発のスピードは上がり続けています。


なぜ今なのか


きっかけはAIです。そしてAIの時代には、「広告の効果を正しく測ること」が、すべての土台になります。

世間では「AIが広告業界を壊す」と言われがちですが、私たちは逆だと考えています。AIは広告市場を縮めるのではなく、広告を出せる場所を増やし、それらを測るために必要な技術のハードルを引き上げているのです。世界の広告費は約1.3兆ドル(約200兆円)規模に向かって拡大を続けていて、米国では伸びが加速しています。それは、AIを使って広告の成果を追求する手法が、実際に効果を上げているからです。増えていく広告費は、その1ドル1ドルについて「効果があったのか」を測る必要があり、しかもその作業はどんどん難しくなっています。

また、広告ビジネスは、出せる場所がどんどん増えています。たとえば、ChatGPTを見ても、OpenAIは2026年初めから、ChatGPTの画面に広告を表示するようになりました。他の大手AIサービスも、これに続こうとしています。ネット通販サイトやAIアプリも同じで、自分のサービス内に広告枠を設けて売り始めています。つまり、これまでになかった「広告を出せる新しい場所」が、次々と生まれているのです。

ただし、広告を出す場所が何十にも増えたうえ、それぞれの場所が「私たちの広告は、これだけ効果がありました」と報告してくることになります。そうした状況であるからこそ、どの会社にも肩入れせず、すべての場所を横断して効果をひとつの物差しで測ってくれる存在が、ますます必要とされます。これはAB180にとって強い追い風です。しかもAB180は一歩先を行っており、AIサービス上の広告から広告主のサイトやアプリに人が流れてくる動きを追いかけられる仕組みを、すでに用意しています。

中立的な計測は、「優位性」から「不可欠なインフラ」へと変わりつつあります。アルゴリズムが購買判断を下す時代において、自らの利害を持つプラットフォームによる計測は、エコシステム全体のインセンティブを歪めます。独立したクロスチャネル計測は必要不可欠であり、広告業界の最大手プレーヤーたちにとっても、守るべき戦略的資産と見なすようになっています。AB180はまさにその市場の一角にあり、それを構築できるアクセスを持つ数少ないプレーヤーの一つです。


今後の展望


自社製品への転換、時間とともに強まるデータの蓄積という強み、健全な経営と成長の両立、そして韓国国内での明確なトップの地位——この土台の上で、AB180の次の一手は「守り」ではなく「さらなる挑戦」です。具体的には、AI製品の開発をさらに進め、AirbridgeとAirfluxを、自社に蓄積されたデータの上で動くAI中心のエンジンへと育てること。営業担当者を介さなくても、顧客が自分で契約して使い始め、利用を広げられる手軽な製品をつくり、特にAIを前提とした新世代のアプリ企業に届けること。そしてこれらすべてを世界に展開し、韓国のトップ企業を、多様化するAI時代の広告市場がますます必要とする存在——市場の土台となる信頼された「効果測定の仕組み」であり、その上で動く「AIによるマーケティングと収益化のエンジン」——へと成長させることです。私たちは、まさにそれを実現しようとするこのチームを支援できることを誇りに思います。



AB180:https://www.ab180.co/en

Airbridge:https://www.airbridge.io/en