【前編】投資だけにとどまらないNFT。LINE Xenesisが語るブロックチェーンの本質

2017年頃から日本でも徐々に盛り上がりを見せた暗号資産市場。認知拡大の契機となったのは2018年のコインチェック事件かもしれません。そして2021年はNFTが世の中の話題をさらいました。

そうしたことから、暗号資産やNFTは多くの人にとって「投資」のイメージが強いかもしれません。しかし、それは本質ではない、と話すのはLINEグループで暗号資産・ブロックチェーン事業を担うLINE Xenesis株式会社(以下、LINE Xenesis)の林(イム)CEOです。

Zホールディングスの一員であるLINE Xenesis(ライン・ジェネシス)は2018年からブロックチェーン事業に取り組んできました。投資イメージが先行してきた暗号資産やブロックチェーンが今後、どのように私たちと接点を持つ可能性があるのかについてうかがいました。



【林仁奎(イム・インギュ)】
2008年4月 CJ Internet株式会社(現ネットマーブル株式会社)に入社、ゲームプラットフォーム事業戦略を担当。
2010年7月 NC Japan株式会社に入社、ゲーム事業における経営戦略や新規事業を担当。
2014年4月 NHN Japan株式会社に入社、日本・グローバルマンガアプリ事業の執行役員に就任。
2018年2月 株式会社カカオジャパンに入社、動画配信事業の事業部長に就任。
2019年3月 LVC株式会社(現LINE Xenesis株式会社)に入社、暗号資産事業の事業戦略業務に従事。
2020年7月 代表取締役社長CEOに就任。

【Z Venture Capital株式会社 アソシエイト 李路成(リ・ロセイ)】*退職済み

2013年4月 早稲田大学入学。

2014年10月 留学生向け教育サービスを立ち上げ。

2017年10月 リクルートに入社。入社後はコンテンツSEO、UIUX改善、有料広告などデジタルマーケティング全般の業務に携わる。

2020年1月 YJキャピタル(現ZVC)に参画し、E-commerce、Fintech、Web3(ブロックチェーン関連)領域を担当し、投資機会の発掘や、最新トレンドの調査を行う。

ブロックチェーンで変わるモノの価値




ブロックチェーンや暗号資産のような分野に興味を持たれたきっかけは何だったのでしょうか?


兼ねてから金融事業としての可能性を暗号資産には感じていましたが、ブロックチェーン自体に興味を持ったのは2021年前後でした。これまでデジタルの価値を証明する手段がありませんでしたが、NFTの登場によりそれが可能になるという点において、大きなインパクトを受けたのを覚えています。

いまは、IoTと同じく、「ブロックチェーン・オブ・エブリシング」(Blockchain of Everything)の時代がやって来ると考えています。世の中のすべてのビジネス・モノがブロックチェーンと出会った時、どのようなシナジーを起こせるか。ブロックチェーンとつながることで“モノ”の役割は大きく変わっていくのではないでしょうか。そこに注目していますし、我々が率先してそのシナジーを起こしていきたいですね。

インパクトがあるのは一般ユーザーが使えるサービス

暗号資産やNFTは日本よりも先に海外で注目を集めました。暗号資産をめぐる状況について、日本と海外ではどのような違いがありましたか?


日本と海外の環境はかなり違います。暗号資産の取引経験者が2,000万人以上いる海外と比べ日本は後発なので、今後の戦略が重要だと感じています。

例えばアメリカでは今年4月に、確定拠出年金「401k」の運用商品にビットコインが採用されました。一般ユーザーへの暗号資産の普及という意味でかなり大きいインパクトがありました。また本プランを世界でも有数の投資信託運用会社であるフィディリティ・インベストメンツが提供していることについても意義が大きいでしょう。こうしたプランの台頭は、海外ですでに暗号資産を活用するマーケットが構築されているため、可能だと感じています。

一方、日本はまだまだ暗号資産を使って何かをするという段階には至っていません。暗号資産で何ができるのか。その価値をこれから創っていく段階にあります。

NFTについては、よく海外での事例が取り上げられていますが、その盛り上がりは一部の人に限られており、暗号資産で莫大な富を得た一部のユーザーが巨大なマーケットを作り上げていると感じています。反対にLINEでは、「誰ひとり取り残さない」NFTの世界を作り上げていくことを使命としていますので、NFTを広く普及していくためにも、使いやすいマーケットプレイスを提供するのはもちろん、パートナー企業やユーザーと一緒になって、新しい世界を作っていきたいと思っています。

サービス提供の手段としての暗号資産及びNFT

LINE NFTで販売されている「星座ベイビーズ」のNFT



LINE Xenesisとして、その価値をどのようにして創っていくかをお聞かせいただけますか?


私の立場でいまそれについて詳しくお話しすることはできませんが「あのサービスもブロックチェーンが使われていたんだ」と思ってもらえるプロジェクトをつくっていきたいですね。

たとえば、インターネットの立ち上がり初期から現在までの進化を思い出してみてください。いま私たちが何気なく使っているインターネットは、情報共有・ネットワーク構築そのものが目的ではなく、よりよいサービスを提供するための手段になっています。このようにそれぞれの会社が自社のサービスを提供するための手段として暗号資産やNFTを使えるようになるとおもしろいと考えています。


LINE Xenesisは日本のNFT市場をどう見ているのでしょうか?


日本では認知の段階から始めていくことが必要だと考えています。注力していきたいのはNFT総合マーケットプレイスの「LINE NFT」です。これからそこでさまざまなケースをつくっていきたいですね。






たとえば、コミュニケーションアプリのLINEでNFTを購入できるようにすることもそのひとつです。LINEのプロフィールやスタンプ、LINEマンガやLINE MUSICにNFTを活用できれば、そのものの唯一無二性を示すことができます。

あくまでも、主語はそれぞれのサービスで、NFTではありません。マンガを売るために、NFTがどう役に立つのか、NFTを導入すると自社のサービスはどう変わるのか。というアプローチをとっていきたいです。

そのためにも、LINE Xenesisでは、サービスの機能向上はとにかくスピード重視でやっていこうと考えています。

LINE Xenesisのメンバーは、多様なバックグラウンドを持っています。ブレストでアイディアを出しやすい環境にありますので、急ピッチで進めていきたいですね。


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